外国人医師の受け入れ(続)

昨日のエントリー(http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100321/1269183898
に早速コメントを頂いたので、もう少し議論を進めてみたい。


<受け入れる外国人医師の質の担保>
まずは、「ちょこ」さんのコメントに御礼を申し上げたい。ご教示頂いた各国の体制については明確には認識していなかったので、参考になった。


外国人医師の受け入れに際し、「質の担保」については最重要の課題になることは間違いない。それを国家試験の形で行なうのか、別の方法(例えば一定期間の質のモニタリング)で行なうのか、議論は必要となろう。仙谷案だと「フリーパス」に近いようなイメージになるが、さすがにそれはないだろう。


ただ、現行の医師国家試験を丸のままの形で通らなければいけないという話も違うように思う。ペーパーテスト中心の国家試験をそのままということになると、言葉のハンデを全面的に押しつけてしまう形になってしまう。また、逆に現行の医師国家試験では不足している部分もあるかもしれない。特に実地の臨床能力についてはより高度なものを求めるべきのように感じる。
(医師でない私にとってはあくまでの推測の議論であることをご承知おき願いたい)


また、例えば精神科医と麻酔科医では患者とのコミュニケーションの質・量を考えても、ハードルが全く異なってくる。受け入れようとする医師の専門科目はある程度絞るべきであろう。



<供給力の増大をまず目指すべき>
「供給力」(「供給医師数」ではなく「供給力」)をある程度短期間のうちに増さないと医療崩壊が進んでしまう、というのが私の根本的な考え方である。


現状見られる「医療崩壊」は、特定の科の勤務医が非常識な厳しい労働(時間)環境に置かれているために起きている。こうした科で頑張られている医師たちの全うな勤務体制の確保(これはとりもなおさず医療の質の担保にもつながる)を行なうことに関しては、私は是非進めるべきと考えている。病院にも労働基準法があてはめられてしかるべきであろう。


そうするためには、過剰労働にさらされている医師たちを孤立させるのではなく集約化することがまず大切。そしておそらく結果として、そうした科での診療報酬をもっと増やす、という解も出てくるであろう。


ただしこれを行なうと、「供給不足の解消」という意味では短期間にはマイナスの方向に働くことになる。1人当たりの医師が診る患者数は大幅に減るが、患者の数は基本的にそこまで減るわけではないからだ。


供給力の増やし方につき、昨日のエントリーで「診療の効率化」と「医師数の増加」の2つがあることを記したが、上記のシナリオを考えると、どちらの打ち手も同時に追求するくらいのことをしないと、とても追いつかないと感じる。



<需要での大幅な調整は無理筋>
供給を何とかして増やさなければならないのは、「需要」はそう簡単に減らすわけにはいかないからだ。病気になる人が急に減るわけではない。医療費を大幅に上げれば需要は減るが、これは昨日も書いたように倫理的な解とは言えない。従って、需要の大幅な調整は無理筋な話だ。


やるとしたら、システムとして無駄な受診を抑制するという話である。例えば、本ブログで以前取り上げた、かかりつけ医・家庭医の制度化<http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100103/1265898762>であったり、場合によっては電話トリアージなどを制度として採り入れていくことも考えられる。


(一点だけ価格を上げて需要調整が必要なのは救急車の利用での受診だろう。これに関しては、タクシー代くらいは請求されてしかるべきだ。)


とはいえ、無駄な受診の抑制で削減できる需要はそう大した話ではないはずだ。



以上、頂いたご意見に基き、自分の考えを進めてみた。多分に観念的で数字に裏打ちされていないという意味で、かなり粗い仮説には過ぎないが、本質はそんなに外していないのではないかと考えている。