WELQだけじゃない、怪しいネット医療情報の見分け方
半年あまりブログの更新が途絶えてしまいました。
年明けから心機一転、また定期的に更新していきますので、お付き合いよろしくお願い致します。
さて、DeNAが運営していた健康医療情報サイト「WELQ」が、閉鎖に追い込まれ、経営陣が謝罪を余儀なくされた件は、皆さんご存知のことでしょう。
医療情報サイトがこれほどまでに世の中を揺るがしたのは、初めてのことではないでしょうか。
今回のWELQ問題は、まさに医療情報サイトである「イシュラン」を運営している私にとっても、見逃せない事件です。
WELQはDeNAという一部上場企業が運営していたためここまで問題が大きくなりましたが、”怪しい”医療情報サイトは他にも山ほどあり、がん関連は残念ながらそうした怪しげなサイトが最も充実してしまっている領域でもあります。
そこで今回は、「怪しい医療情報サイト」を見分ける4つのコツをお伝えします。
<コツその1:わかり易い”断定的”な話は警戒せよ>
怪しい医療情報は、「XXで100%がんは治る」「XXでがんが消えた!」「XXは副作用がありません」などなど、きわめて「断定的」&「扇情的」な表現が使われがちです。
たとえば、
のように。
(「副作用がありません」って、それで有効な治療だったら、今頃ノーベル賞取っていますよ...)
一方、科学的に正しくあろうとすればするほど、そして丁寧に表現しようとすればするほど、断定的な表現はしづらく、歯にものの挟まったような言い方になることがほとんどです。
「XX治療で再発を防げる確率はX割程度高まると考えられているが、再発しないとは言い切れない。また、治療によりYYの副作用がY割程度、ZZの副作用がZ割程度出る恐れがある」
というような感じで。
これはもう致し方のない話で、どんな治療でも「100%」の効果はまずないですし、副作用の心配が無い治療もありません。(副作用が無いとしたら、砂糖水みたいなものを飲ませているだけでしょう)
「世の中に”うまい話”は転がっていない」わけであって、冒頭書いたような「断定的」&「扇情的」な言葉を見たら、警戒してください。
え?「この文章での表現は随分断定的じゃないか?」ですって?
良いところに気づかれました(笑)
断定的な表現にしないと、人はなかなか惹き付けられないし記憶にも残らないものでして...
<コツその2:「治療前」⇒「治療後」の写真があったらアウト>
えせ免疫療法クリニックのサイトによくあったのが、「治療前」と「治療後」の写真の比較を出して、「がんが消えた」ことをビジュアルで実感させる手法です。
最近は厚生労働省の広告規制の変更の影響で、サイト上に比較写真を掲載していない場合も増えてきていますが、未だにこの手の比較写真が掲載されていたら、そのサイトは「怪しい」と思ってください。
パンフレットなどの印刷物にあっても同じことです。
典型的なのは、
のようなサイトですね。
そもそも、その薬が本当に効果があるかどうかは、たった1例の「治療前」「治療後」の比較だけでは何もわかりません。
例えば、その薬が投与されている間、もしくは投与の始まる直前期に別の薬が投与されていたとしたら、その別の薬の効果が出ているのかもしれないわけです。
きちんと効果の有無を調べるためには、年齢や進行度等々、同じような条件の患者の集団を2つに分け、その薬を投与した群と投与しなかった群で効果を比較してみないといけません。
いわゆる「治験」ではこうした比較試験を厳格な形で行なっていますし、そうした治験の結果はレベルの高い論文雑誌に学術論文として投稿・掲載されます。
そして治験結果であっても、「治療前」「治療後」の比較の写真が出回ることはないということを、憶えておいて頂きたいと思います。
<コツその3:一見すると信憑性がありそうな”泊付け”に注意>
どんな情報でも、その「情報源」が何か、で信頼性は変わってきます。
WELQによくあった書き方のように、情報源が何も記されておらず、単に「XXXと言われています」というのは一番信頼できません。
怪しいサイトはそんな稚拙なやり方ではなく、あの手この手で「信憑性」を増すような工夫をしています。
よくある手口が、医師のオピニオンの形をとることです。(しかも、残念なことに高名な医師の名前を担いだりする事もあります)
たとえば、
http://www.gan-info.jp/interview/interview01/
のようなサイト。
大学病院の医師だからといって、信用して良い訳ではありませんよ。
「学会発表」もよく使われます。たとえば、
のようなサイト。
残念ながら、学会発表程度は科学的に首を傾げるような話でもできてしまいますので、何の説得力にもなりません。
臨床試験の「論文掲載」もやはりよく使われる手口です。
この場合、臨床試験の内容を吟味する必要があります。
先ほど挙げたテラのサイトでは、
http://www.gan-info.jp/interview/interview04/
のようなページがあります。
これを見ると、
>>
私たちが行った臨床試験(※2)では、進行性膵臓がんの患者さん7名に、樹状細胞ワクチン療法と化学療法を受けていただきました。7名の中で、非常に効いた方は3名、ほどほどに効いた方は1名、あとの3名は効果がありませんでした。治療効果があった方は3例とも非常に良い治療成績で、一番長生きされている患者さんは治療を開始してから3年6ヶ月くらい経過していますが、現在もお元気に過ごされています。
>>
というような記載があります。
この臨床試験で樹状細胞ワクチンの効果について言えることは、残念ながら何もありません。
化学療法が効いたのか、樹状細胞ワクチンが効いたのか、全然わからないからです。
前述した「治験」レベルの臨床試験ではじめて、その治療法に本当に効果がありそうかどうかの判断材料になると考えてください。
<コツその4:運営者や書き手の”顔”を見定めよう>
インターネット上の情報サイトの場合、運営者が誰なのか、書き手は誰なのか、まで見ておく必要があります。
たとえば、
の「がん治療最新情報」というサイト。
webmaster.k.kobayashi なる人がやっていそうだということだけはわかりますが、その人が一体どのような人物であり会社を運営しているのか、さっぱりわかりません。
また、「乳がん 名医」と検索した時に、今でもイシュランが抜けないトップのサイトがあるのですが、、、
こちらも、運営者情報がほとんどわかりません。
ブログや一部のSNSのように、たとえ匿名であっても、その人の見識や人となりが累積した情報から判断しうるものであればまだ良いのですけれど、そうでない限り、運営者や書き手の情報がきちんと見えないサイトは、信用しない方が良いです。
以上、4つのコツをお伝えしましたが、こうしたコツが必要なくらい酷い状況になってしまっているというのが現実でして、怪しさを「嗅ぎ分ける」力を少しでもより多くの方が持てるよう、このブログでの発信を継続していきたいと思います。