米国でホルモン陽性進行乳がんに新薬Palbociclib登場、は良いのだけれど...

先日、Facebookのタイムラインで↓の記事が流れてきました。

  ■「米FDA 乳がん治療薬Ibranceを承認」(ミクスOnline)

   

この薬剤、成分名をPalbociclibといい、CDK4/6阻害剤という新しい種類の抗がん剤(分子標的薬)です。「ホルモン療法による治療歴のない閉経後エストロゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性の局所進行/転移性乳がんの適応」で、2月3日に米国FDA(米国版の厚生労働省的な機関)で承認されました。

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ER陽性/HER2陰性の進行乳がん患者165例を対象とした治験で、「Palbociclib+レトロゾール併用群」と「レトロゾール単独群」で比較したところ、無増悪期間(PFS、がんの悪化が抑えられている期間)で20.2ヶ月vs10.2ヶ月と、2剤併用群の方が明確に良好な結果を示したのを受けてのことです。

 

進行乳がんで、PFSが「10ヶ月の延長」というのはかなりインパクトが大きく、FDAが「画期的新薬」ならびに「迅速審査」の対象として指定していたのもむべなるかな。対象となり得る患者さんにとってはとりあえず福音と言えるでしょう。

 

ただし、この薬も高い!

(「も」というのは、本メルマガの読者の多くの方はご存知の通り、最近出てくる抗がん剤が軒並み超高額のためです)

 

薬価がどれくらいかというと、、、

月額$9,850(約120万円)。1年間もし服薬を続けるとすると、$118,200(約1400万円!!)です。

 

乳がんの領域では、HER2陽性の進行・再発乳がん治療薬であるカドサイラについでの年間1000万円超え。

 

もちろん高額療養費制度の対象になってきますが、このままの価格で日本に入ってくるとなると、保険財政への悪影響は否めません。

 

↓のブログエントリーでも書きましたが、今後このレベルの薬価の薬ばかりになるとすると、がん患者の命を1年延ばすために国として年間6兆円ずつコストが増えていくことになりますので... 

  ■「1年延命のコストが1500万円?~新薬カドサイラの薬価問題が暗示する未来~」

   

Palbociclibが日本に入ってくるあたりから、日本でも医療経済的な検討を真剣に行ない、適正な薬価がどの程度なのかという議論がきちんと行なわれるようになることを望みますし、実際そのような流れになるのではないかと推測しています。

*筆者は、再発乳がん領域で複数の製薬会社との間でCOI(利益相反)があります