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後発品再考

先週末からTwitterで後発品についてのやり取りがあった。医師の方も意外に仕組みを知られていない方が多そうだ。いわんや一般の方をや、であろう。ということで、先日の「どう育てる?日本の後発品メーカー」

http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100601/1275404570  
http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100602/1275490798 

の2度のエントリーで書き足りなかったことについて述べておく。



「作り易い後発品と作りにくい後発品がある」


製剤的に作り易い後発品と作りにくいものとがあるのは意外と知られていないかもしれない。基本的に液剤(注射剤)や錠剤は比較的簡単に作れる。一番作りにくいのは外用剤(塗り薬)。薬効成分以外の基材と呼ばれる部分が工夫のしどころだが、このノウハウが後発品メーカーは持っていないケースが多い。


「製造特許」が残っているものなのか否か、もポイントになる。後発品は「成分特許」が切れれば出てくるが、「製造特許」は依然として残っているケースがある。この場合、先ほどの外用剤のケースのように製造方法自体にノウハウのキモがある場合、同等の効果・安全性を実現するハードルは一段と上がる。



「イトラコナゾールの事例」


筆者が拘わっていたイトラコナゾールのカプセル剤(主に爪水虫の治療に使われる)は、後発品が非常に「作りにくい」薬剤と言われていた。カプセルの中の粒子の作り方に工夫のポイントがあったのだが、当時は製造特許が残っており、この工夫に関して後発品メーカーは真似できない状況にあった。実際、後発品天国の米国でも、製造特許侵害の係争中の製品と、先発品メーカーが自ら製品を提供していた後発品ブランド以外は後発品は出てきていなかった。


確か、日本での後発品登場時5剤ほど出てきていたと記憶しているが、とりあえず添付文書見ただけで、感じる疑問が色々とあった。吸収に難があるため食直後投与の薬なのに、なぜほとんどの会社が空腹時投与で済ませているのか。そして、空腹時投与の会社のデータを横に比較してみるとなぜこうも違うのか。(↓参照)


自社品Cmax(ng/mL) 先発品Cmax(ng/mL)
イトラコン(日医工) 14.8±6.6 15.4±8.5
イコナゾン(大洋) 33.9±21.1 32.6±18.8
イデノラート(長生堂) 59.8±11.8 58.9±11.2
・・・


Cmaxとは、薬が血中でどれくらいの濃度まで上がったかの数値で、AUCと共に「同等性」を証明するカギとなる数値。確かに「自社品」と「先発品」は見事に「同等」なのだが、製品横断で見てみると、何で同じはずの「先発品」の数字がここまで違ってくるのだろう、と不思議になる。


臨床現場からも数々のフィードバックがあった。「同じように効いている。問題ない」という話もあれば、「効果が出ない。おかしい!」という声もあった。しかし、臨床医の肌感覚で効果の違いを覚えられるケースが次々に出てくるようでは、問題であろう。たまたま見つけた↓のブログ「あおば皮ふ科『院長日記』」が、医師の「実感」と、あるべき後発品への見方を非常に良く表現されている。
http://incho-blog.at.webry.info/200810/article_1.html



「本当に必要な試験」


実は、イトラコナゾールのケースは、同等性に対する疑問を実際に示す実験データが複数出てきて、学会からの要望も出たため、政府も重い腰を上げて非常に異例ではあるが添付のような形で追加試験を行なうことになった。
http://www.info.pmda.go.jp/generic/file/20100114_4.pdf


若干遅きに失した感はあるが、きちんと裏付け調査を行なおうという姿勢は評価すべきである。「どう育てる?日本の後発品メーカー(2)」でも書いたが、市販後調査をきちんと行なう事が、後発品の「品質」の担保に直結する。徹底してやったら、「価格勝負型」のメーカーは淘汰されてしまうかもしれないが、それでも、後発品の品質に対する「信頼」を醸成するには必要な投資と考える。


ところで上述のイトラコナゾールの試験、今年の2月には結果が出ている事になっているが、まだどこにも見当たらない。かなり「マズイ」データが出てきて厚労省も慌てているのではというのは穿ち過ぎた見方であろうか。


イトラコナゾールにしても、すべての後発品がダメというわけではなかろう。しかし、使う側にしたらどれが良くてどれがダメなのかわからないまま、「どれも同じですよ」と出されるのでは、食指が動かない。厳しい事後チェックで「腐ったリンゴ」の混入を許さない事こそが、後発品のシェアを引き上げるための最重要課題なのだ。