医療への視点

マスコミが薬害をつくってはならない〜あさイチの「がんワクチン療法最前線」への違和感〜

今週初め、NHKの朝のテレビ番組「あさイチ」をたまたま目にしたら、「驚き!がんワクチン療法最前線」という題が目に飛び込み、ちょっと見逃せないぞということでついつい全部見てしまった。動画に関しては、NHKオンデマンドを見るしかなかろうが、文字ベー…

患者視点で考える開発治験のデザイン(2)

患者にとって、最良の治験データというのは、既存の治療法に対して白黒つけるものであるのに、大半の治験デザインはそうなっていない(ほとんどが”上乗せ”の治験デザイン)。しかし、これを正そうにも製薬会社の資金サポートで収入の多くを賄っているような…

患者視点で考える開発治験のデザイン(1)

昨年の肺癌学会総会のプレナリー・セッションで非常に興味深い議論が戦わされていた。非小細胞肺がんEGFR陽性症例に対しての一次治療薬としての有用性をゲフィチニブ(イレッサ)が明確に示したわけだが、順番としてゲフィチニブ(イレッサ)を先に使うのが…

がん対策推進協議会の議論の中身を濃くするために

がん対策推進協議会が、次期がん対策推進基本計画を決めていく本格的な議論開始ということで、先月から集中的に開催されている。先週12日(月)に11月の前回に引き続き傍聴したのだが、どうにも消化不良感が残っている。 <そもそも資料の読み込みに2時間近…

がん治療薬に1000万円払いますか?〜英国NICEの決定から考える高額薬剤費の負担のあり方〜(2)

<続:コストの担い手は誰か?> 前々回エントリー「がん治療薬に1000万円払いますか?〜英国NICEの決定から考える高額薬剤費の負担のあり方〜(1)」の最後で出てきた、急増している高額のがん治療薬剤費の負担は一体誰がしていくべきなのか?についての考…

がん治療薬に1000万円払いますか?〜英国NICEの決定から考える高額薬剤費の負担のあり方〜(1)

英国のNICE(英国立医療技術評価機構。薬剤を評価して保険適応の可否を決定している)が、BMS社の皮膚がん治療薬Yervoyを、8万ポンド(約1000万円)の治療費に見合わないという理由で保険適応を承認せず、というニュースがあった。 http://health.yahoo.net…

愛媛のがん患者調査

9月に入っても暑い日々が続いたが、漸くに終わりを告げようとしている事を感じる夜だ。このブログも2か月の夏休みだったが、今日から復帰したい。 (前回エントリーの佐々木俊尚さんの集中講義を聴いての考察の続編は、ご勘弁いただくという事でご了承くだ…

ドイツの病原性大腸菌は日本の食物の放射能汚染より深刻

日本でもそれなりにニュースにはなっているが、ドイツで起きている病原性大腸菌の感染問題はもっと注目すべき問題だと感じている。既に18人の方が亡くなっており、日本での食物の放射能汚染の問題より、はるかに深刻な話だ。 この大腸菌(日本ではO104との名…

学術大会を東北でやろう~長期的な支援の考え方~

震災の影響を受け、循環器学会や外科学会など、大型の学術大会の中止が目立つようになってきた。あまりにも直近に予定されているとか、会場が被災地なのでやむを得ないという学会もあろうが、そうでない学会、特に地方都市で開催する学術大会については是非…

イレッサ訴訟報道に抜け落ちている2つの視点

イレッサの訴訟で、大阪地裁の判決が先週金曜日に出た。 製薬会社(アストラゼネカ)のみ製造物責任を認定された形での敗訴で、国はかろうじて敗訴を免れた、という報道がされている。しかし、各社の報道を見ていて、すっぽり抜け落ちている観点が2つあると…

ちょっと待て:医療用医薬品の広告解禁は止めるべき

世の中で規制緩和の議論がされる場合、一般的に「規制」=悪、「規制緩和」=善、の文脈で捉えられる。私自身、余計な規制は取っ払うべきというスタンスでいるし、医療分野で言えば、例えば、OTC(街の薬局で処方箋なしで買える一般用医薬品)のネット販売は…

MRがいる意味って何だろう

花粉症の季節である。今年の花粉の飛散量はかなり多いと報道されているが、確かにもう目がかゆくなってき始めたので、早速抗アレルギー剤を処方してもらっている。この領域の薬剤を持っている会社は、さぞかしニコニコしている事だろう。 製薬業界というのは…

がん患者にとって必要なのは、"腫瘍主治医"

がん医療にまつわる問題を見ていて、どうにも”腹落ち”しない議論がある。地域連携とか病院内での連携のシステムだ。”連携”という言葉ほど耳障りは良いのだけれども、対応してくれる人がころころかわるばかりで、患者さんにとっての安心感が脇に置かれてしま…

近藤誠医師の”抗がん剤は効かない”への処方箋

今年に入ってから、文藝春秋および週刊文春上で、慶應医学部放射線科講師の近藤誠医師と腫瘍内科医がバトルを繰り広げている。文藝春秋上で「抗がん剤は効かない」とする近藤医師に対し、国立がん研究センター中央病院の腫瘍内科医・勝俣医師とM.D.アンダー…

「明日を支配するもの」

あけましておめでとうございます。 昨年1月には月間300ユニークアクセス数に満たなかった本ブログも、おかげさまで12月には3000ユニークアクセスまで増えてきました。「継続は力なり」で、今年も書き続けて行きますので、お付き合いのほど宜しくお願い致しま…

事実は小説より奇なり〜がん対策推進協議会での珍事件〜

<珍事件の勃発> 先日開催されたがん対策推進協議会で珍事件が起こった。 5人いる患者委員の一人から「緊急動議」が出され、垣添座長の解任を申し立てたのだ。結果的に否決されたものの、垣添座長は自ら辞任、といわば”前代未聞”の事態で会議運営が”迷走”す…

癌治療学会に参加して(1)~がん診療で必要なエビデンスの見せ方って何だろう~

癌治療学会から帰ってきた。かつてメーカーの人間として参加していた時と比べると、色んなセッションを自由に行き来し、色んな科の医師、看護師、患者、メディア、メーカー等の人たちと会話することができ、見晴らしの良さを感じる。 さて今回、今まで常識的…

日本の医療問題の本質(1)〜医師不足は何故起きる〜

1か月ほど前の事だが、医療は「福祉主義的(社会主義的?)」であるべきで「資本主義」を導入するのはけしからんという言説が、私のTwitterタイムライン上でgatacccaさんから発信された。少々間が空いてしまったが、本件についての私の見解を何回か分けて述…

日本の医療用医薬品が"高価"は幻想である

「日本の薬は海外と比べてあきらかに高い」、というある先生のTweetを今日見かけた。 同じような言説を他でも目にした事があるが、製薬会社での経験から言って、「日本の薬価が世界で飛びぬけて高い」との論には、非常に違和感がある。 <薬価はどのようなロ…

大人の歯の手入れ

「オイワサン」という単語を久しぶりに思い出した。 親知らずを4本同時に抜くために入院中の妹を見ての事である。仕事の合間に術後2日目に見舞いに行ったのだが、可哀そうなくらい顔の下半分が腫れていた。全身麻酔で3時間以上手術したらしく、相当な難物…

「がんサポート」への疑義〜がん免疫特集を読んで〜

「がんサポート」というがん患者向けの月刊誌がある。「信頼度No.1のがん実用誌!」と銘打っており、確かに良質な記事も多く、私も仕事柄愛読している雑誌だ。 しかしながら、最近発売されたがんサポート9月号の内容は酷かった。「がん免疫特集」の号だった…

ホメオパシーの罪作り度合いを考える

「ホメオパシー」 この単語は、恥ずかしながら最近Twitterで話題になるまで、つゆ知らなかった。 ご存じない方のために、「ホメオパシー」とは、、、 「健康な人間に与えたら似た症状をひき起こすであろう物質をある症状を持つ患者に極く僅か与えることによ…

映画「希望のちから」から汲み取る医療の行動規範

昨日まで実家の家族と長期旅行に出かけていた妻と娘が帰ってきて、久しぶりに騒がしい朝と夕刻の日々が戻ってきた。 家事から解放されていたこの10日間、本を読む時間もできたが、久しぶりにDVD鑑賞もできた。随分前にアマゾンで購入したまま観れずじまいだ…

製薬マーケティングに求められるROIの感覚

今週は、アポの件数を若干絞って再来週に予定されているファルマビジネスアカデミー(PBA)の講演の準備に時間を充てている。 講演の中でも触れようと思っているのが、製薬会社のオカネの使い方の拙さ。違法なものに使っているとかではなく、単に投資対効…

がんにあってがんに非ず?〜前立腺がんとPSA検査値〜

「家病」というものがあるのならば、我が父系は「前立腺疾患」がそれにあたる。祖父は前立腺肥大とがんを患っていたし、その息子は父を含め4人兄弟全員が前立腺肥大の治療をしている。いずれ、前立腺がんに罹るリスクも考えておかなければならないだろう。 …

胃がんの治療ガイドラインに見る、あるべきガイドラインの"カタチ"

がんの治療ガイドライン、つぶさにご覧になった事のある方はどれくらいいらっしゃるだろうか。 最近、いくつかのがん種で日本の最新のガイドラインをざっと眺めてみたのだが、そもそも最新のガイドラインがどこにあるのかを探すだけで一苦労するのに閉口した…

後発品再考

先週末からTwitterで後発品についてのやり取りがあった。医師の方も意外に仕組みを知られていない方が多そうだ。いわんや一般の方をや、であろう。ということで、先日の「どう育てる?日本の後発品メーカー」http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100601…

200万の眠れぬ夜〜むずむず脚症候群〜

「患者は200万人とも言われている」 昨日朝起きてTVのスイッチを入れたら、そんな言葉が飛び込んで「お、何の話だろう?」と思ったら、NHKニュース「おはよう日本」で「むずむず脚症候群」について取り上げられていた。まだそれほど人口に膾炙していない疾患…

どう育てる?日本の後発品メーカー(2)

<昨日のエントリーの続き> 【薬価は揃えるべきではあるものの。。。】"交通整理"されていない"一物多価"の状況は、患者からしてみたら非常にわかりにくい。そもそも、同じ効果・安全性を前提とするならばなぜこんなにも価格が違うのか。 と考えていくと、実勢…

どう育てる?日本の後発品メーカー(1)

先週末、サノフィアベンティスが日医工に資本参加するニュースが飛び出した。 国内外問わず、先発品メーカーが後発品メーカーを買って別ブランドで参入するのはよくある話で、後発品市場の拡大が見込まれる日本では、まだまだこの類の動きがあるだろう。株式…