200万の眠れぬ夜〜むずむず脚症候群〜

「患者は200万人とも言われている」


昨日朝起きてTVのスイッチを入れたら、そんな言葉が飛び込んで「お、何の話だろう?」と思ったら、NHKニュース「おはよう日本」で「むずむず脚症候群」について取り上げられていた。まだそれほど人口に膾炙していない疾患だが、このブログでも以前一度取り上げた。

むずむず脚症候群http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100108/1262965755

潜在患者がかなり多いことがクローズアップされてきたところは、一昔前の爪水虫みたいな感じだ。


患者のいわゆる「疾患アンメット・ニーズ」は色々あるが、ざっくり類型化してみると、


① そもそも診てもらうべきものかどうかがわからない
② どこで診てもらったらよいのかわからない
③ 診てもらっても(診断が拙くて)適切な治療を受けられない
④ 治療により不快な思いをする(副作用、クスリの飲みにくさ、等)


の4つに分けられる。「むずむず脚症候群」はこの中でも特に②と③の問題が大きい疾患だ。(①もあるけど、例えば爪水虫などと比べても患者の「切実度」はかなり違うので、相対的には大きな問題ではないと考える)


実際、自分の脚が”むずむず”して眠れない症状が続いて困り果てたとしたら、どこに受診したら良いのか、予備知識がなければかなり迷うだろう。症状は痒みなので、皮膚科に行く?何だかよくわからないから、いつも軽い病気で診てもらっている内科に行く?実際、そうした受診行動をとる患者さんも多いと聞いたことがある。


しかしながら、皮膚科医でこの疾患を鑑別できるような医師はまずほとんどいないだろう。一般の内科でもしかり。ということで、診断がしっかりつかずに睡眠薬を処方されて、「それでも眠れない」と悩まれる患者さんが後を絶たない、という話が、「おはよう日本」でも紹介されていた。あまり考えたくないが、このような状況では、睡眠薬を増量されたり抗うつ薬が乗せられたりして副作用で更に苦しんでしまうような患者さんすらいそうな気がする。


こうした問題を解決する上で、報道の果たす役割は大きい。ED(勃起不全)やAGA(男性型脱毛症)などのかなり商売色の濃い「生活改善」の疾患領域であれば、製薬会社もTV-CMや新聞広告などのDTC(Direct from Consumer)を積極的に行なうが、そうでもない限りはこの手の疾患啓発は、結構地味だったりやっても単発だったりする。自分の経験からしても、使えるマーケティング予算が限られてしまっていると、色々工夫したとしても打ち手は限られてくる。


その意味で、今回の「おはよう日本」では疾患についての解説のみならず、患者会が正しく治療できる病医院のデータベースを作成していて、問い合わせに対し対応しているという話の紹介があったのは良かった。


製薬会社側にしても、「正しい鑑別診断ができる医療機関/医師」について、わかっている限りの情報を積極的に公開していく、というのがあるべき態度だろう。これは取りも直さず、自分たちの収益改善にもつながる。


因みに、むずむず脚症候群については、鑑別疾患ができるのは「神経内科」と「睡眠専門医」である。
(Muzumuzu.jpより http://www.muzmuz.jp/examine/examine01.html


これから寝苦しくなる季節。200万の「眠れぬ夜」が、ちょっとでも少なくなることを願いたい。


*本稿作成にあたり、以下のWebsiteを参照させて頂きました。
・「むずむず脚症候群友の会」(http://www.muzumuzu.org/index.html
・「Muzumuzu.jp」(http://www.muzmuz.jp/index.html