がん検診のワナ

昨日のエントリーに続き、CNJさんの公開講座ネタをもう一つ。


当日のメインテーマとはちょっとずれた話だったのだが、面白かったのが国立がんセンターの斎藤先生による「がん検診は全ての人に有益ですか?」。


テーマから容易に想像がつくが、「検診=善いこと」と盲目的に捉えがちな考え方に対し、検診は患者にとって不利益にもなり得るのだということを論じられていた。


斎藤先生が強調されていたのが、「がん発見率が高い検診=よい検診」とは限らない、という点。本当に死亡率を下げることにつながる検診はよい検診と言えるが、発見率が高いからといって、死亡率を下げることにはならないケースもかなりあるという。


例えば、前立腺がんで言うと、全く別の理由で亡くなられた人たちを解剖してみると、同じ年齢で前立腺がんに罹患していると診断されている人数の数倍から数十倍の前立腺がんが見つかるのだという。ということは、敢えて検診をして見つけることにより、しないでもよい治療をしたり、余計な心配が増えたりということになりかねないということだ。このデータは、今まで見た事もないようなものだったので、本当にびっくりした。


閉会の挨拶でCNJの柳澤さんからもコメントがあったが、40歳未満のマンモグラフィーによる乳がん検診に関しても、上述の「死亡率を下げる」効用は無いことが指摘されている。これは、若い女性では発達している乳腺が存在することによって、がんをdetectするのが難しいからであるが、日本ではそのあたりの事情を反映しないまま、ピンクリボン活動が継続されているようだ。


例えば、↓のようなサイトは、乳がん治療医師がからんだNPO法人なのに、恐怖心をあおって20代からの検診を暗に進めている。
http://www.j-posh.com/mgen.htm


一見してさも良い事をしているかのように見えるのに、その実、逆のことをしている、というのが一番よろしくない。以前のエントリー「知る権利、知らない権利」(http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100222/1266852054
で真実をすべて伝えることの良し悪しを論じたが、検診に関しては、少なくとも現時点で正しいと考えられる事実を、あまねく伝える必要があろう。CNJさんには今持っているスタンスを変えずに、ぜひ今後も頑張って頂きたい。