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イシュラン編集長が選ぶ2016年のがん医療界5大ニュース

今まで年末恒例でお届けしていた年間のがん医療界「5大ニュース」ですが、今年は年始とさせていただきます。

 

ちなみに、過去2年間の5大ニュースは↓のような感じ。

 

<2014年>

第1位:ホンモノの免疫療法の登場

第2位:近藤誠の怪進撃

第3位:C型肝炎の治療が大進化!肝臓がんは激減へ

第4位:前立腺がんに新薬続々登場

第5位:マンモグラフィの意義、大いに揺らぐ

 

<2015年>

第1位:世の中の「がん」への関心が一気に上昇〜北斗晶さん現象〜 

第2位:抗がん剤の超高額化の波止まらず、「Value」が求められる時代へ 

第3位:”ホンモノの”免疫療法時代の幕開け 

第4位:待望のがん患者の全国組織「全国がん患者連合会」設立 

第5位:反論続々、近藤誠医師の”怪進撃”に待った!

 

さて、2016年はどうだったでしょうか?

 

 

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第5位:小林麻央さん、乳がんを公表

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2015年の第1位は、世の中の「がん」への関心が一気に上昇〜北斗晶さん現象〜、でしたが、2016年も多くの有名人の方ががんの罹患を公表されました。

 

私の記憶にあるだけでも、南果歩さん(乳がん)、小倉智昭さん(膀胱がん)、渡瀬恒彦さん(胆のうがん)、、、

 

そして、誰よりも世間が大騒ぎとなったのが、6月にあった小林麻央さんの乳がんの公表でした。

 

news.biglobe.ne.jp

    

 

麻央さんの病状の公表後、夫の市川海老蔵さんの再三のお願いにも拘らず不躾な取材攻勢が続き、私の周囲の患者さんたちからも、本当にそっとしてあげて欲しいという声が数多く上がっていました。

 

そんな中、麻央さんは、9月からブログをスタートします。

 

ameblo.jp

   

 

 

ブログが公表されて以来、報道機関の記事はほぼすべてこのブログ記事がベースに書かれているように見受けられます。芸能マスコミから主導権を見事に取り戻したと言えるのではないでしょうか。

 

ブログを書き始めた日に、麻央さんはこう記しています。 

 

>>

乳がんであることが突然公になり、

環境はぐるぐる動き出しました。

 

そこで、

これまで以上に病気の陰に隠れようとして

 

心や生活をさらに

小さく狭いものにしてしまいました。

 

これは自分自身のせいです。

 

 

私は

力強く人生を歩んだ女性でありたいから

子供たちにとって強い母でありたいから

 

ブログという手段

陰に隠れているそんな自分とお別れしようと決めました。

>>

 

今日現在も進行形で継続しているこのブログは、真の強さと優しさを持った麻央さんの日常を毎日伝えています。これからも暖かく見守っていきたいですね。

 

 

 

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第4位:受動喫煙ががん罹患リスク因子として認定。防止の法制化への流れできる

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国立がん研究センターが8月末に発表した、受動喫煙での肺がん発症リスクのニュース、かなり多方面で大きく報道されました。

 

www.nikkei.com

      

 

この「1.3倍」という数値は、メタアナリシスと呼ばれる手法で、過去に出された研究結果を統合して解析した結果から導かれており、科学的には「確定的」と言って差し支えありません。

 

これに対し、JTが反論し、さらに国立がん研究センターが再反論するという、ちょっと異例の展開になりましたが、JT側が(当然ではありますが)完全に論破されてしまいました。

 

gigazine.net

   

 

受動喫煙は、JTが言うような「迷惑」や「気配り、思いやり」の問題ではなく、「健康被害」「他者危害」の問題であるという”国がん”のスタンスには、私も強く同意します。

 

この追い風を受け、10月には、ついに厚生労働省受動喫煙対策の法制化への具体的な動きを起こします。

 

www.asahi.com

   

 

「主な公共施設で建物内禁煙とする一方、飲食店などサービス業の施設は原則禁煙とし喫煙室の設置は認める」という現行案は、非常にリーズナブルではないでしょうか。

 

是非一日でも早く、法案が可決されることを願います。

 

 

 

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第3位:医療情報サイトWELQが大炎上⇒閉鎖に

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先月のメルマガでもお届けしましたが、DeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ」が大炎上の末、閉鎖の憂き目に遭いました。

 

toyokeizai.net

  

 

医療情報サイトがこれほどまでに世の中を揺るがしたのは、初めてのことではないでしょうか。

 

WELQの手法については、今回の騒動の真の火付け役と言える、永江一石さんが詳しく解説していますので、ご興味ある方はご覧下さい。(大手マスメディアの報道は基本的に、この後追いです)

 

 ■「DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回)」 https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30141

 

 ■「【告発も追記】やってはいけない一線を越えたDeNAのウェルク(Welq)をとりあえず直ちに閉鎖すべき理由(シリーズ第2回)」 https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30166

 

 ■「東大薬学部五十嵐准教授がDeNAのウェルク(Welq)をさくっと検証した結果(シリーズ第3弾)」 https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30231

 

 ■「パクリWebスパムのウェルク(welq)はどのようにして誕生したのか(シリーズ第4回)」 https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30247

 

このWELQ問題、「医療」というものを軽く見て、患者さんのリスクや不利益を無視した形で短期的な利益最優先で事業を展開すると、一時はうまくいってもいずれは馬脚を現すことになるという良い教訓ではないかと思います。

 

イシュランにとっても「他山の石」となった出来事でした。

 

 

 

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第2位:がん対策基本法の改正法案がついに成立!

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12月9日に、「がん対策基本法の一部を改正する法律案」が衆議院で可決され、法案が成立しました。

 

www.nikkei.com

   

 

この法案、全会一致で可決され、非常にスムーズに事が運ばれたように見えますが、実は成立がかなり危ぶまれる状況もありました。

 

実際、昨夏の通常国会では、審議日程の確保ができないということで、同案の提出が一度キャンセルになって「振り出し」に戻ってしまったという経緯があります。

 

今回も、参議院での審議が滞りかけた中、全がん連やがん議連を中心とした関係者の必死の努力が実り、なんとか審議に至りました。

 

改正法案のポイントは、下記の3つになります。

 

1)患者の雇用の継続や円滑な就職に対する配慮が求められることが法律に明記された

2)治療オプションの少ない希少がんや難治性のがんにも光が当たった

3)がん教育の推進が明記された

 

一点目が、特に働き盛りの世代にとって重要な話です。治療費も生活費も重くのしかかる中で、収入の安定的な継続というのはまさに死活問題ですから。

 

しかしながら、残念ながら解雇を迫られる等で離職せざるを得ないというのは、よくあるケースなのです。

 

news.yahoo.co.jp

   

 

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など、革新的ではあるが高額な治療が主流を占めつつある中、がんは「お金のかかる慢性疾患」化していくことが中長期的に想定されます。

 

その意味で、雇用の継続や円滑な就職に対する配慮が求められることが法律に明記されたことは時宜にかなっており、実のある対策が官民共に策定・実行されていくことを期待したいと思います。

 

   

 

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第1位:超高額薬剤にメス。オプジーボ薬価は半減へ

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超高額な抗がん剤が次々に出てくる中、本当にそれだけの「価値」があるかどうかが、厳しく問われる時代に入ってきた、というのが2015年の5大ニュースの一つでした。

 

2016年はその流れが日本で大きく顕在化した年だったと言えます。

 

まず、4月より医薬品の薬価算定における費用対効果評価の試験的導入が始まりました。

 

  ■「【中医協総会】「ソバルディ」など7品目‐費用対効果の対象決まる」(薬事日報) 

    

対象となったのが、慢性C型肝炎治療薬(5品目)、乳がん治療薬のカドサイラ、悪性黒色腫・非小細胞肺がん治療薬のオプジーボです。

 

特に、話題の免疫チェックポイント阻害剤であるオプジーボが、再発・進行の非小細胞肺がんで承認されるにあたり、そのあまりの薬価の高さが医療保険システムに与える影響に対して、医療界の中からも疑念の声がわき上がりました。

 

代表的なのが、現役の肺がん治療医でもあり医師作家としても著名な里見清一さんの論です。

 

www.dailyshincho.jp

  

 

まあ、肺がんの場合、1人当たりの薬剤費が年間3500万円ですから、これはさすがにあり得ないレベルです。

 

そして、、、

結果として、オプジーボは「半額」となりました。

 

toyokeizai.net

  

 

しかし、元が高すぎるため、半額になったとはいえ依然として「超高額」な薬剤であることは変わりありません。

 

この先、薬価面での調整は引き続きあるとはいえ、超高額な抗がん剤を、「どう使うか」「誰に使うか」といった議論は避けて通れないと考えます。

 

深く突っ込んだ論考はまた別途出したいと思いますが、いずれにせよ「費用対効果」が日本の医療でも普通に語られる時代に突入したことだけは間違いありません。

WELQだけじゃない、怪しいネット医療情報の見分け方

半年あまりブログの更新が途絶えてしまいました。

年明けから心機一転、また定期的に更新していきますので、お付き合いよろしくお願い致します。

 

さて、DeNAが運営していた健康医療情報サイト「WELQ」が、閉鎖に追い込まれ、経営陣が謝罪を余儀なくされた件は、皆さんご存知のことでしょう。

 

toyokeizai.net

  

 

医療情報サイトがこれほどまでに世の中を揺るがしたのは、初めてのことではないでしょうか。

 

 

今回のWELQ問題は、まさに医療情報サイトである「イシュラン」を運営している私にとっても、見逃せない事件です。

 

WELQはDeNAという一部上場企業が運営していたためここまで問題が大きくなりましたが、”怪しい”医療情報サイトは他にも山ほどあり、がん関連は残念ながらそうした怪しげなサイトが最も充実してしまっている領域でもあります。

 

そこで今回は、「怪しい医療情報サイト」を見分ける4つのコツをお伝えします。

 

 

<コツその1:わかり易い”断定的”な話は警戒せよ>

 

怪しい医療情報は、「XXで100%がんは治る」「XXでがんが消えた!」「XXは副作用がありません」などなど、きわめて「断定的」&「扇情的」な表現が使われがちです。

 

たとえば、

kibou-mori.jp

のように。

(「副作用がありません」って、それで有効な治療だったら、今頃ノーベル賞取っていますよ...)

 

一方、科学的に正しくあろうとすればするほど、そして丁寧に表現しようとすればするほど、断定的な表現はしづらく、歯にものの挟まったような言い方になることがほとんどです。

 

「XX治療で再発を防げる確率はX割程度高まると考えられているが、再発しないとは言い切れない。また、治療によりYYの副作用がY割程度、ZZの副作用がZ割程度出る恐れがある」

 

というような感じで。

 

これはもう致し方のない話で、どんな治療でも「100%」の効果はまずないですし、副作用の心配が無い治療もありません。(副作用が無いとしたら、砂糖水みたいなものを飲ませているだけでしょう)

 

「世の中に”うまい話”は転がっていない」わけであって、冒頭書いたような「断定的」&「扇情的」な言葉を見たら、警戒してください。

 

え?「この文章での表現は随分断定的じゃないか?」ですって?

 

良いところに気づかれました(笑) 

断定的な表現にしないと、人はなかなか惹き付けられないし記憶にも残らないものでして...

 

 

 

<コツその2:「治療前」⇒「治療後」の写真があったらアウト>

 

えせ免疫療法クリニックのサイトによくあったのが、「治療前」と「治療後」の写真の比較を出して、「がんが消えた」ことをビジュアルで実感させる手法です。

 

最近は厚生労働省の広告規制の変更の影響で、サイト上に比較写真を掲載していない場合も増えてきていますが、未だにこの手の比較写真が掲載されていたら、そのサイトは「怪しい」と思ってください。

パンフレットなどの印刷物にあっても同じことです。

 

典型的なのは、

www.hu-clinic.com

のようなサイトですね。

 

そもそも、その薬が本当に効果があるかどうかは、たった1例の「治療前」「治療後」の比較だけでは何もわかりません。

 

例えば、その薬が投与されている間、もしくは投与の始まる直前期に別の薬が投与されていたとしたら、その別の薬の効果が出ているのかもしれないわけです。

 

きちんと効果の有無を調べるためには、年齢や進行度等々、同じような条件の患者の集団を2つに分け、その薬を投与した群と投与しなかった群で効果を比較してみないといけません。

 

いわゆる「治験」ではこうした比較試験を厳格な形で行なっていますし、そうした治験の結果はレベルの高い論文雑誌に学術論文として投稿・掲載されます。

 

そして治験結果であっても、「治療前」「治療後」の比較の写真が出回ることはないということを、憶えておいて頂きたいと思います。

 

 

 

<コツその3:一見すると信憑性がありそうな”泊付け”に注意>

 

どんな情報でも、その「情報源」が何か、で信頼性は変わってきます。

 

WELQによくあった書き方のように、情報源が何も記されておらず、単に「XXXと言われています」というのは一番信頼できません。

 

怪しいサイトはそんな稚拙なやり方ではなく、あの手この手で「信憑性」を増すような工夫をしています。

 

よくある手口が、医師のオピニオンの形をとることです。(しかも、残念なことに高名な医師の名前を担いだりする事もあります)

 

たとえば、

http://www.gan-info.jp/interview/interview01/

のようなサイト。

 

大学病院の医師だからといって、信用して良い訳ではありませんよ。

 

「学会発表」もよく使われます。たとえば、

www.saisei-mirai.or.jp

のようなサイト。

 

残念ながら、学会発表程度は科学的に首を傾げるような話でもできてしまいますので、何の説得力にもなりません。

 

臨床試験の「論文掲載」もやはりよく使われる手口です。

この場合、臨床試験の内容を吟味する必要があります。

 

先ほど挙げたテラのサイトでは、

http://www.gan-info.jp/interview/interview04/

のようなページがあります。

 

これを見ると、

 

>>

私たちが行った臨床試験(※2)では、進行性膵臓がんの患者さん7名に、樹状細胞ワクチン療法と化学療法を受けていただきました。7名の中で、非常に効いた方は3名、ほどほどに効いた方は1名、あとの3名は効果がありませんでした。治療効果があった方は3例とも非常に良い治療成績で、一番長生きされている患者さんは治療を開始してから3年6ヶ月くらい経過していますが、現在もお元気に過ごされています。

>>

 

というような記載があります。

 

この臨床試験で樹状細胞ワクチンの効果について言えることは、残念ながら何もありません。

化学療法が効いたのか、樹状細胞ワクチンが効いたのか、全然わからないからです。

 

前述した「治験」レベルの臨床試験ではじめて、その治療法に本当に効果がありそうかどうかの判断材料になると考えてください。

 

 

 

<コツその4:運営者や書き手の”顔”を見定めよう>

 

インターネット上の情報サイトの場合、運営者が誰なのか、書き手は誰なのか、まで見ておく必要があります。

 

たとえば、

www.kenko-msnet.jp

の「がん治療最新情報」というサイト。

 

webmaster.k.kobayashi なる人がやっていそうだということだけはわかりますが、その人が一体どのような人物であり会社を運営しているのか、さっぱりわかりません。

 

また、「乳がん 名医」と検索した時に、今でもイシュランが抜けないトップのサイトがあるのですが、、、

 

www.breastcancer-ranking.com

 

こちらも、運営者情報がほとんどわかりません。

 

ブログや一部のSNSのように、たとえ匿名であっても、その人の見識や人となりが累積した情報から判断しうるものであればまだ良いのですけれど、そうでない限り、運営者や書き手の情報がきちんと見えないサイトは、信用しない方が良いです。

 

 

以上、4つのコツをお伝えしましたが、こうしたコツが必要なくらい酷い状況になってしまっているというのが現実でして、怪しさを「嗅ぎ分ける」力を少しでもより多くの方が持てるよう、このブログでの発信を継続していきたいと思います。

愛犬家ご注意!〜キシリトールは犬には猛毒〜

キシリトールと言えば、ガムなどによく使われている人工甘味料

そんな馴染みの深い成分が、犬にとってはなんと猛毒だということを初めて知りました。

f:id:healthsolutions:20160630160312j:plain

 

”Artificial Sweetener Used In Chewing Gums Can Kill Dogs” 「ガムに使われる人工甘味料は犬に猛毒」 (TECH TIMES) 

ow.ly

  

アメリカ食品医薬品局(FDA)が5月12日に警告を発しました。

 

FDAには、チューインガムを食べてキシリトール中毒を起こす事例がこれまでも報告されてきたのですが、ここ1、2年でキシリトールが普及してきたからか、急増しているらしいのです。

 

でも、人間では全く問題になっていないのに、不思議ですよね。

 

実は、キシリトールは人間ではそんな作用はまったくないのですが、犬だとすい臓からのインシュリンの急激な分泌を招くのです。

 

インシュリンというのは、糖尿病の治療薬にもなっているように、血糖値を下げる作用があります。これが急激に分泌されると、「低血糖」と呼ばれる状態に陥ってしまうのです。

 

低血糖なってしまうと、脱力・ふらつき・失神・けいれんなどの症状が起き、命に関わる状態です。

 

ちなみに、猫でのキシリトール中毒は報告されていないのですが、これは甘味はネコ科が好む味ではないからではないかと言われています。

 

しかし、飼い犬が散歩中に、道ばたに落ちているガムやお菓子を拾い食べするなんてシーンは、よくありそうですものね。愛犬家の皆さま、くれぐれもご注意を。

 

糖尿病薬メトホルミンが閉経後女性のがん死亡リスクを低下させる!?

世界中で広く処方されている糖尿病薬の一つに、メトホルミンというものがあります。

 

日本での商品名は「メトグルコ」「メデット」「ネルビス」など、古い薬で特許が切れていますので色々な会社から販売されています。

f:id:healthsolutions:20160605163531j:plain

 

このメトホルミンが、どうも、閉経後女性のがん死亡リスクを低下させるらしいという研究結果が出てきました。

 

ow.ly

   

  (元の論文はこちら→ http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.29944/abstract )

 

この研究では、1993年から1998年までの間に閉経後となっていた女性14.5万人の医療記録を調べています。

 

まず、がんと糖尿病の両方に罹患していた女性は、がんのみに罹患していた女性と比べ、死亡リスクが46%高い、と。これは当然と言えば当然でしょう。

 

次に、糖尿病患者はがんによる死亡リスクが、非糖尿病患者より高く、がんの罹患率は糖尿病の治療薬を何を使っているかに拘らず変わらなかった、と。これもまあそうかなと思います。

 

しかしながら、メトホルミンを服用していた糖尿病患者に限っては、がんによる死亡リスクが、その他の糖尿病治療薬の服用患者よりも低く、非糖尿病患者と変わらないレベルだった、というのです。

 

非糖尿病患者に対し、メトホルミン服用者は8%のリスク増で、メトホルミン以外の服用者は45%のリスク増と、両者の間には有意差ありました。

 

さらに、乳がんによる死亡リスクについて言えば、非糖尿病患者に対し、メトホルミン服用者は50%のリスク減(!)で、メトホルミン以外の服用者は29%のリスク増でした。

 

n数が少ないためか、有意差まではついていないようですが、これはちょっと驚きですね。

 

メカニズムがまだ全然見えていないですし、「後ろ向き」研究のみなので、これで結論が出たとは言えません。

 

しかし、同じ糖尿病治療をするのであれば、値段の高い新薬よりもメトホルミンを使った方が安くなるし、がんによる死亡リスクも下げられる可能性があるということは、糖尿病を患われている女性の患者さんは知っておいて損の無い情報だと思います。

 

がんから社会復帰したロールモデルを見つけられる「5years」

昔、乳がん患者さんを対象に調査した時に、周囲の人に対する要望として、「普段通りに接してほしい」「原因を一緒に考えてくれなくて良い」といった声が多く上がっていたのが印象的だったのですが、そんな記憶が、↓の記事を読みながらよみがえってきました。

 

 

president.jp

  

 

>>

自分が患者になったとき、身体的な辛さもありましたが、それ以上に辛かったのは周囲の人たちからかけられる何気ない言葉でした。

 

・・・

 

友人や知人からいろんな言葉もかけられました。「かわいそう」、「気の毒だ」、「君みたいな良い人が、なぜ……」とか。でも、がんって人を裁くものではありません。誰もがなりうる病気で、哀れに思われるとみじめになります。がん患者に言葉をかけるのは難しいかもしれませんが、患者としては、やっぱり普段どおりの普通の会話が一番嬉しいのです。

>>

 

 

この記事を書かれているのは、ファイブイヤーズ代表の大久保淳一さん。

精巣がんのサバイバーです。

 

大久保さんが闘病中にネット上で情報収集して行く中で困ったのが、「治療の辛さとか亡くなった人の情報ばかりで、病気を乗り越え社会復帰した人たちの情報がなかったこと」でした。

 

そこで、同じがんという病気で社会復帰したロールモデルを見つけられるようなサイトをつくるため、

 

 ■患者と家族が情報を共有できるコミュニティサイト「5years」http://5years.org

 

を立ち上げます。

 

このサイトの「ごあいさつ」のページで、大久保さんが書かれている言葉です。

 

>>

 このサイトには、治療を終え無事に社会に戻った人たちがたくさん登場します。そして治療中の人、ご家族、リハビリ途上の人、社会に戻った人が体験に基づくさまざまな情報を交換し、似た境遇の方々が交流を通じて明日へのエネルギーを生み出し合います。

 

 5years とは、そんなパワースポットのような場です。

>>

 

患者会などとはまた違った形で、オンライン上でこうしたコミュニティが出来上がったのは、素晴らしいことです。

 

で、早速、会員登録して「みんなの広場」の内容を見てみました。

  

ウィッグの情報とか、先生に感謝のお手紙を送ってみた経験のシェア、などの、患者さんにとって意義のあるやり取りは、想像以上に素晴らしい。

 

一方、一部で治療方法のアドバイスや科学的エビデンスの無さそうな治療法を行なっている医療機関の推奨などの内容が含まれていたのが気になりました。

 

私も患者向けの情報サイトを扱っているので、このあたりは気をつけているのですが、個別の治療法への言及(アドバイス)というのは、ちょっと超えてはいけない一線なんですよね。

 

運営側がきちんと内容を精査して、怪しい治療法の宣伝場にならないように是非して頂きたいところです。使う側としては、その辺りを注意して使えば有用な情報サイトだと思います。

 

 

 

 

 

抗がん剤も「経済性」を問われる時代が、待ったなしでやってきた

4月7日付けの日本経済新聞一面トップニュースは、↓でした。

 

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薬価、割高なら下げ 効果と見合うか検証 

18年度から 厚労省、まず4種・4機器

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厚生労働省は2018年度から、高額の薬について価格(薬価=総合2面きょうのことば)の算定方法を見直す。同じような効果を持つ薬を比較して、割高なほうの価格を適切な水準に下げる。年40兆円にのぼる医療費の約4分の1を占め、高額化の一途をたどる薬剤費を抑える。非常に高価な一部の抗がん剤などが対象になる可能性がある。英国などを参考に、高い価格に見合う効果があるかという「費用対効果」のものさしを薬価に導入する。

 

・・・

 

 同省の専門家会議がデータを分析し、費用と釣り合う効果があるか見極める。たとえば高額な抗がん剤を服薬した場合にどれだけ延命や症状緩和効果があったかや、後遺症や生活の質がどのくらい改善するかを同種の薬と比べる。費用には薬代だけでなく入院費や検査代も含める。

 既存の薬に比べてさほど効果が変わらないのに価格が2倍になっている薬があれば、「費用対効果が低い」として値下げする。高額でもそれに見合う効果が認められれば値下げしない見通しだ。

>>>

f:id:healthsolutions:20160505152950j:plain

 

いよいよ来ましたね。

 

本ブログでも再三指摘していますが、近年承認されている抗がん剤の薬価のレベルは、明らかに保険財政的に持続不可能な高さになってきているものが多いです。

 

薬価に最も寛容な米国ですら、↓のような話が出てきました。 

 ■”Cost-Effectiveness of Pertuzumab in Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Positive Metastatic Breast Cancer”「HER2陽性乳がんにおけるペルツズマブの費用対効果」(Journal of Clinical Oncology)

  

HER2陽性の乳がんの治療法として、旧来の「ドセタキセル(タキソテール)+トラスツズマブ(ハーセプチン)」(TH)に対し、「ドセタキセル(タキソテール)+トラスツズマブ(ハーセプチン)+ペルツズマブ(パージェタ)」(THP)の方が治療成績としては良好で、今ではこちらが標準療法になっていますが、追加費用に見合うくらい良好と言えるかどうかということを調べた文献です。

 

生存期間の中央値は、THが39.4ヶ月に対しTHPは56.9ヶ月と、17.5ヶ月(1.81年)の延長効果があります。

 

ただし、副作用も更に増えることも加味すると、本当の意味で元気でいられる期間の延長(これをQALYと呼びます)は、0.62年のみと計算されます。

 

この0.62年のQALY(元気でいられる期間の延長年数)に対する費用は47万ドル。

10万ドル/QALYの目安を大幅オーバーで費用対効果は認められず、というのがこの論文の結論です。

 

まあ、そんなQALYベースのややこしい計算しないまでも、生存期間の延長を丸々カウントしたとしても10万ドル/年は軽く超えてしまうのはすぐわかると思うのですが...

 

いずれにせよ、国内でも海外でも、抗がん剤の「経済性」を問われる時代が、待ったなしでやってきたと言え、今後の製薬メーカー各社の対応と当局との交渉の行方が注目されます。

 

【推薦図書】「がんとともに、自分らしく生きる」

虎の門病院の腫瘍内科医である高野利実先生が、初めての著書を出されました。

 

がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う「HBM」のすすめ―

がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う「HBM」のすすめ―

 

 

   

高野先生曰く、「最近の、『近藤本』や『アンチ近藤本』の刺激に疲れた患者さんの心にしみるような文章を心がけました」とのことでしたが、実際に読んでみて、今までがん治療医が書かれた本の中でも、患者さんに寄り添った優しさを特に強く覚えました。

 

この本の功績は、2つあると思っています。

 

1つは、「抗がん剤治療を行なわない」のもオプションの一つであると、抗がん剤のプロである高野先生が明確に述べ、実際に有効な手だてがある可能性が残された中でも抗がん剤治療を中止された事例がいくつも紹介されていることです。

 

実は、「抗がん剤治療を行なわない」オプションを示すことは、心あるがん治療医はきちんと行なっているのですが、近藤誠医師がらみの論争だと、「抗がん剤は是か非か」という観点のみが語られ、がん治療医側からの反論がどうしても「抗がん剤は是」という部分が強く聞こえてしまうきらいがありました。

 

しかし、本来の治療選択は、患者さんが「どう生きたいのか」ということを出発点にして考えるものであり、抗がん剤治療を行なわない選択肢も取り得るものです。

 

高野先生は、この、「患者さん一人ひとりの想い、価値観、語り合い」をベースにした医療を「HBM(Human Based Mdeicine)」と呼び、「EBM(Evidence Based Medicine)」の更に一歩先に考えなければならないものとして位置づけています。

 

もう1つの功績は、「抗がん剤治療を行なわない」選択肢は、近藤誠医師の言う「放置治療」とは異なるということをはっきりさせている点です。

 

>>

本書でもたくさん登場したように、私の患者さんたちのなかで、抗がん剤を使わない選択をした方は多くおられます。私が抗がん剤治療をやめるようにすすめることもよくあります。これを「がん放置療法」と呼ぶのであれば、私も、「がん放置療法」という選択肢を積極的に取り入れているということになります。

でも、私は、抗がん剤を使わないとしても、患者さんを苦しめているものを放置することはなく、できる限りの緩和ケアを行いますし、責任をもって患者さんの診療を行います。

 

・・・

 

近藤さんが、「何かあったら、私のところに駆け込めばいい」と言って、受け皿を用意してくれていればいいのですが、残念ながら、そんなことはありませんので、いざ、病状が進んで、医療が必要になったときに駆け込む先は、一般の医療機関です。

・・・

これは、「がん放置療法」というよりも、「がん患者放置療法」で、あまりに無責任だと思っています。

>>

 

抗がん剤治療に疑問を持たれながら治療を続けているような方、是非本書を手に取られることをお勧め致します。