長尾和宏先生、どうしちゃったんですか?:「再発・転移をする人としない人の差」

長尾和宏先生と言えば、がん医療界では「反近藤誠」の論客として有名な方です。

 

shukan.bunshun.jp

週刊文春WEB)

    

当時は近藤医師に対するわかり易い反論を好意的に拝見していましたが、最近どうも怪しい論調が目立つようになり、「長尾先生、あなたもですか」と言いたくなるような状況になってきました。

 

酷いなと思ったのはこの記事です。

apital.asahi.com

朝日新聞医療サイト「apital」)

   

「長尾先生から見て、どんな人が再発・転移しやすいかどうか、何か特徴はありますか?」という読者からの質問に対し、長尾先生は↓のような話を書いています。

 

>>

  私は、手術直後にはがん細胞はどこかに少し残っているものだと思っています。

  しかし自然免疫の力でリンパ球ががん細胞をやっつけてくれるものだと思います。

 

  ですから、再発するはずなのにしない、ということが実際にあります。

  従って再発させないための食事やライフスタイルはある、と思います。

 

  手術後に怒ってばかりの人は、よく再発しました。

  反対に、笑ってばかりの人は、再発しませんでした。

 

  個人的には、ミネラル豊富な野菜を食べると免疫能が上がると思います。

  土の中に埋まっている野菜、大根や人参やお芋さんなどを勧めています。

 

  京野菜のような高価な野菜を食べなさい。

  野菜だけにはお金をかけなさい、と毎日、口癖のように言っています。

>>

 

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うーん、ここまでノーエビデンスで「思います」自説をずらずらと展開されてしまうと、もう頭を抱えざるを得ません。

 

乳がんの患者さんにとって、再発リスクに関して注意すべきことは、「肥満」と「脂肪」です。

2つほど論拠をご紹介します。

  ■”Weight, Weight Gain, and Survival After Breast Cancer Diagnosis”乳がん診断後の体重、体重増と生存率」(ASCO)

   

5204人の患者を24年間追跡調査した結果、非喫煙者に限ってですが、乳がんでの死亡リスクは体重を維持していた群と比べ、体重微増群(中央値3kg弱程度)で35%増、体重激増群(中央値8kg弱)で64%増という結果でした。

 

  ■”Dietary Fat Reduction and Breast Cancer Outcome: Interim Efficacy Results From the Women's Intervention Nutrition Study”「脂肪摂取減と乳がん患者のアウトカム:栄養摂取介入研究の中間解析結果」(JNCI)

   

2407人の被験者を食生活介入群と非介入群に分け、介入の予算が尽きた時点(中央値で5年経過)で中間解析しています。

 

すると、再発の比率は介入群で9.8%だったのに対し、非介入群は12.4%。つまり、介入したことで再発リスクを24%下げたということになります。

 

脂肪摂取量が介入群は33.3g/日に対し非介入群は51.3g/日。体重は介入群の方が3kg弱軽くなっていたことを考えると、やはり「肥満」と「脂肪」が再発リスクに関与している可能性は高そうです。

 

よりヘルシーな食事を心がけるのは体重や体脂肪管理に必要ですけれど、何も高価な京野菜まで揃える必要はなさそうです。

 

近藤誠医師もそうですが、極論を断定的に語ると耳目を魅き付ける効果があります。最初は良心で始めていたものが次第に「ウケ狙い」を重んじるようになり、最後は「教祖化」してくるのですね。

 

そういう意味で、「反近藤誠」で一世を風靡した長尾医師も、結局は近藤医師と同じような道に進みつつあるという、何ともやるせない状況です...

 

日経ビジネスも信用なりません⇒「なぜ関空に世界のがん患者が集まるか」

日経ビジネスからまたもや”怪しい”記事が出てきました。

 

  ■

business.nikkeibp.co.jp

日経ビジネスオンライン

   

 

この記事、ゲートタワーIGTクリニックなる医院の院長、堀信一医師のインタビューで成り立っています。

 

がん治療周辺の話はかなり詳しいはずの私も聞いたことの無い施設で、「???」とクエスチョンマークが頭を飛び交いながら熟読しましたが、実に酷い内容の記事でした。

 

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この施設で集中的に行なわれているのが、「血管塞栓によるがん治療」。

 

「血管塞栓によるがん治療は、手術のできない末期の方の救いになる治療法というイメージがありますが、どのようながんに向いているのでしょうか? また、どのような症状の方に向いているのでしょうか?」

 

という問い(そもそもこの問い自体、”末期の方の救いになる治療法というイメージ”なんていう極めてバイアスがかかった質問ですね)に対し、

 

「部位別にいうと、乳がん、肺がん、肝臓がんなどを得意としています。このほかに、卵巣がん、子宮がんなども血管内治療に向いています。最近では、胃がんの治療成績が上がっています。」

 

なんていう回答になっているのですが、上がっているという「治療成績」はこの記事にも、IGTクリニックのHPにも見当たりません。

 

堀先生の業績なるものを眺めてみても、どこそこで講演したというような話はやたらと入っていますが、きちんとした論文は見当たりません。(まっとうな科学者であれば、論文以外のものを「業績」とは呼びません)

  ■業績集(IGTクリニックHP) 

 

ちなみに、血管(動脈)塞栓術というのは、肝臓がんの治療としては日本では標準治療の一部ですが、乳がんなど他のがんでは標準治療ではありませんし、そうした治療をしているという話はまっとうな医療機関ではまず聞きません。

 

調べてみると、聖マリアンナ医科大学で投与実績がありました。 

  ■乳癌動注療法聖マリアンナ医科大学放射線医学HP)

 

>>

 皮下埋め込み型リザーバー鎖骨下動注化学療法は、全身への抗がん剤投与が困難な患者様、または全身化学療法では効果が得られない患者様に対して効果が期待できる新しい治療法です。当施設では、本法の安全性と有効性を確認するために、現在臨床試験を実施しております。

>>

 

そうです。聖マリアンナ医科大学でも「臨床試験を実施」してその有効性や安全性があるかどうかを確認している段階なのです。

 

まっとうな臨床試験すら実施していないようなエビデンスの無い保険外の治療法を、広告まがいの記事でデカデカと掲載してしまうというのは、きわめて由々しき事態。

 

日経ビジネス、本当にどうしちゃったんでしょうね…

不可能を可能にする:脊椎の転移巣を取り除く金沢大の驚きの術式

泌尿器科学会のランチョンセミナーで腎がんの脊椎転移の手術について、金沢大学整形外科学・村上英樹准教授の非常に興味深い話を聴くことができました。

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脊椎、つまり背骨への転移は、腎がんだけではなく、乳がんや前立腺がんなど他のがん種でも発症します。不思議なことに他のがんでは放射線治療が有効ですが、腎がんはあまり効かないらしいのです。

 

とはいえ、脊椎に転移してしまうと、痛みと麻痺でADL(身体の活動性)が大きく損なわれてしまい、予後も芳しくありません。

 

なのでできれば転移巣を取り除く手術をしたいところですが、これがかなり高難度。というのも、背骨の真ん中には孔があって、その中に傷つけてはいけない神経の束が縦に走っているからです。

 

旧来の手術は、背骨に孔を開けて腫瘍部分を「引っ掻き出す」やり方くらいしかできませんでした。

 

でも当たり前ですが、そんなやり方では腫瘍を綺麗に取り除くことができませんし、引っ掻くことでむしろがん細胞を周囲に広げてしまうため、治療成績も上がりません。

 

そこにまったく新しい術式「腫瘍脊椎骨全摘術」が登場します。 

  ■「CLOSE UP NOW! 世界が驚愕した高度先進医療を展開し、最後の砦として、最高・最善の治療に挑む」(金沢大学附属病院整形外科ホームページ)

    

真ん中の神経を傷つけないように、糸のこぎり(!)を背骨の内部に通して外側に向かって切り出す、というやり方なのだそうです。(上下2カ所で半周ずつ切ってパカっと切り出すイメージですね)

 

そして、切り出した腫瘍骨は、冷凍してがん細胞を完全に死滅させてから元に戻す。自己組織を使うことで早期の修復が可能になる、と。

 

術後の成績も極めて良好で、まったく脚を動かせなくなってしまったような患者さんが元気に普通に歩けるようになり、何年も元気に過ごされているという症例が何件も出てきているようです。

 

よく整形外科は「大工」に喩えられるのですが、いやはやこれはたしかに「名工」の仕事です。

 

ちなみに、腎がんの場合は一度放射線を当ててしまうと、後々手術で切開した場合に傷口がぱかっと開いたまま閉じなくなってしまうリスクがあるらしく、「どうか放射線治療はしないままで紹介してください」と村上先生は強調されていました。

 

この新たな術式、最初は金沢大学だけでしかできなかったようですが、今では全国でも数カ所の病院で同じ治療が受けられるようになってきているとのこと。

 

外科医というと最近、千葉県がんセンターや群馬大病院などネガティブなニュースが流れていますが、こうした素晴らしい仕事をされている医師もいるのだということも是非知って頂きたいと思います。

アンジェリーナ・ジョリーとBRCA遺伝子変異

あのアンジェリーナ・ジョリーが、一昨年の乳房に続き、今年は卵巣と卵管を「予防的切除」したというニュースがかけめぐりました。

 

  ■「アンジェリーナ・ジョリーさん、卵巣も摘出 がん予防で」(朝日新聞デジタル、元ネタニューヨーク・タイムズ

   http://www.asahi.com/articles/ASH3S5QVGH3SUHBI02C.html

 

アンジェリーナ・ジョリーさんはBRCA遺伝子に変異があることが既にわかっています。

 

BRCA遺伝子変異が陽性の場合、乳がんのみならず卵巣がんも罹患リスクが高いわけですが、それにしても確定診断のレベルではなく兆候が見られた時点で予防的切除を選択したというのは、勇気ある決断だと思います。

 

彼女が予防的切除を選択したのは、一旦BRCA遺伝子変異陽性のがんが発症して進行してしまうと、有効な治療薬は現段階では限定的であることの裏返しでもあります。

 

そんな中、BRCA遺伝子変異陽性のタイプのがん患者さん向けの薬が、現在治験段階に入っています。

  ■”Olaparib Monotherapy in Patients With Advanced Cancer and a Germline BRCA1/2 Mutation”「BRCA遺伝子変異陽性の進行がん患者に対するオラパリブ単剤療法」(Journal of Clinical Oncology)

   

乳がん卵巣がんのみならず、すい臓がん、前立腺がんといった様々な進行がん患者298名を対象に、オラパリブというBRCA遺伝子変異をターゲットとした抗がん剤を投与したPhase2試験です。

 

対象患者の内訳・詳細は↓

乳がん(62例):化学療法を3レジメン以上投与経験

卵巣がん(193例):プラチナ製剤抵抗性(プラチナ製剤を投与して効果が認められなかった)

・すい臓がん(23例):ゲムシタビン投与経験

・前立腺がん(8例):ホルモン療法+化学療法経験

 

乳がん卵巣がんは知っていましたが、すい臓がんや前立腺がんにも「BRCA遺伝子変異陽性」タイプがあるのですね。

 

功率(がんの縮小が認められた率)は下記のようになりました。

乳がん:12.9%

卵巣がん:31.1%

・すい臓がん:21.7%

・前立腺がん:50.0%

 

副作用は、頻出のものが、「倦怠感」「吐き気」「嘔吐」。Grade3以上の重篤なものに限ると、「貧血」が一番多かったようです。

 

この結果をもって有用性があると判断され、更に次の大規模治験(Phase3)に入ることが予想されます。有効な治療法が生まれる日が近いことを期待しましょう。

 

 

※筆者はオラパリブに関して特段のCOI(利益相反)はありませんが、再発乳がんの領域では複数の製薬会社との間でCOIを有します

 

本物の免疫療法と偽物の免疫療法

こともあろうに、天下の日経ビジネスから「いかがなものか」という記事が出てきました。 

 

ow.ly

日経ビジネスオンライン

    

本メルマガで何度か紹介しているPD-1阻害剤の登場に伴い、「免疫療法」を怪し気なものまで一緒くたににされるような状況を危惧していたのですが、まさか日経ビジネスのような優良コンテンツを出す媒体から出てきたとは絶句です。

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この記事、「テラ」という企業とその樹状細胞ワクチン製品の宣伝に化してしまっています。

 

>>

—他のがんワクチンと比べた利点は。

 

矢﨑社長:一般的ながんワクチンは、抗原を体内に直接注射する。ただ、がん患者では免疫機能そのものが低下している場合も多く、がん細胞を効率よく攻撃できないことがある。これに対してバクセルは個々の患者ごとに細胞を加工するため、樹状細胞を確実に司令塔として働かせることができる。ステージの進んだがん患者にも有効性が高いと考えられる。

>>

 

「テラ」はJASDAQにも上場していますし、この記事を見たら一般の方には良質なバイオベンチャー企業に思えるでしょうし、患者さんやご家族にとっては使ってみたいと思われてしまいそう。

 

でも、彼らのHPを覗いて、「有効性が高い」と唱える根拠となるデータを見てみると、ほんまにこんなんでええんやろか???、という内容のオンパレードなんです… 

 

www.tella.jp

 
   
 

・こけおどし1:「8,900症例もの実績」

自分たちの息のかかった契約医療機関でいくら使われてきたからといって、有効性とは何の関係もありません。

 

・こけおどし2:「米国の学会誌「Pancreas」に掲載された論文」

>>

セレンクリニック東京において難治性として知られる膵臓がんに対して樹状細胞ワクチン「バクセル®」と抗がん剤を併用した治療で、49例中17例において、がんの消失・縮小・進行停止といった反応が認められ、約3割の患者さんに効果が認められたことが、報告されています

>>

とのことですが、原文のアブストラクトを見てみると、いずれも進行すい臓がんでは標準治療薬になっているゲムシタビン(ジェムザール)やS-1(ティーエスワン)との併用での話です。

 

ということは、標準治療薬が効いているのかバクセルが効いているのかわからず、バクセルの有効性を示すものではありません。

 

・こけおどし3:「樹状細胞ワクチン「バクセル®」を受けられた患者さんの治療例」

いや驚きました。ここまで堂々と「使用前」「使用後」みたいな比較写真を載せること自体、医療用医薬品(候補)として不適切だからです。しかも、ここに出ている2症例はいずれもやはり他の抗がん剤との併用例。厚生労働省の方々は、こういうのを放っておいて頂いては困ります。

 

樹状細胞ワクチンによる免疫療法は、受ければ「うん百万円」という高額な治療費がかかり、なおかつ有効性を裏付ける信頼度の高い科学的根拠はまだないのが現状です。

 

ということで、免疫療法には本物と偽物(少なくとも今のところは)がありますので、どうか皆さま気をつけてください。

 

米国で初めて承認された「バイオシミラー」ってなんじゃらほい?

「バイオシミラー」という言葉をご存知でしょうか?

 

医薬品には低分子化合物と高分子化合物があります。

 

・低分子化合物:設計図(化合物の構造)が簡単に書ける物質

・高分子化合物:化合物の構造が複雑すぎて設計図として表現しきれないような物質。タンパク質など

 

という違いがあります。

高分子化合物の医薬品は、バイオ医薬品と呼ばれたりもします。

 

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いわゆるジェネリック医薬品というのは、低分子化合物の先発医薬品とまったく同じ化合物で作られた医薬品のことです(ただし、添加物は異なるケースあり)。薬価的には先発品の60%が基本。

 

まったく同じ化合物ですから、効果や安全性も先発品と同じと仮定し、治験で効果と安全性を確かめるプロセスは飛ばして承認されます。

 

これに対し、バイオシミラーは、高分子化合物の先発医薬品と”似て非なるもの”です。構造が複雑すぎて完全に同じものを作ることができないんですね。薬価的には先発品の70%が基本。

 

似ているとはいえ異なる化合物なので、治験で効果と安全性が先発品と同等であることを確認する必要がありますし、発売されてからも一定期間の市販後調査という、先発品同様のプロセスが必要です。

 

そんな「バイオシミラー」が米国で初めて承認されたというニュースが入りました。 

  ■「米FDA 初のバイオシミラー フィルグラスチムを承認」(ミクスOnline)

   

フィルグラスチムはG-CSF製剤という種類の薬剤で、抗がん剤(化学療法)の副作用でよくある好中球減少症に使われます。

 

米国では初承認ということなのですが、日本ではバイオシミラー、実はすでに市場に出回っています。

上記のフィルグラスチム(製品名:グラン)やエポエチナルファー(製品名:エスポー)などです。

 

このバイオシミラー登場の流れは、抗がん剤市場にとっても大きな話です。

 

というのは、ベバシズマブ(製品名:アバスチン)やトラスツズマブ(製品名:ハーセプチン)など、

分子標的薬の多くが「バイオシミラー」の対象となる「バイオ医薬品」の範疇に入るからです。前項で取り上げたPD-1阻害剤もそうです。

 

これらの高額な薬剤のバイオシミラーが「本当に先発品と同等の効果と安全性を実現できるのか」は大前提としてもちろん重要ですし、「どの程度普及し医療費の削減に貢献できるか」という医療経済的観点からも重要になってきます。

 

ということで、「バイオシミラー」という単語、今後「ジェネリック医薬品」と同じくらいの重みを持つ言葉として、是非ご記憶頂ければと思います。

PD-1阻害剤ニボルマブ、進行扁平上皮肺がんで”爆速”承認

本メルマガの過去記事で、PD-1阻害剤ニボルマブが肺がんで有望なデータが出てきた旨を取り上げました。

  ■「PD-1阻害剤ニボルマブの肺がんでの新データ」(イシュランメルマガVol.41)

    

上記のデータを基に、米国FDAが”爆速”で承認したというニュースです。 

  ■”FDA Approves Nivolumab to Treat Metastatic Squamous Non–Small Cell Lung Cancer”「FDAが進行扁平上皮肺がん治療薬としてニボルマブを承認」(The ASCO Post)

   

 

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メルマガの過去記事を書いた時点では、

 

「進行例でかつ既に別の抗がん剤での治療歴のある患者さんに対し、PD-1阻害剤ニボルマブを投与した群とドセタキセルを投与した群とで比較したところ、全生存期間(OS)で有意な差が出た」

 

ところまでしかわかっていませんでしたが、今回、有効性の詳細や副作用のプロファイルも見えてきました。

 

プラチナ系化学療法剤での治療歴のある扁平上皮型の進行非小細胞肺がん患者272名を、ドセタキセル投与群137名とニボルマブ投与群135名で比較。

 

全生存期間(OS)の中央値が、ドセタキセル群6.0ヶ月に対しニボルマブ群が9.2ヶ月ということで、しっかりと有意差がついた形でニボルマブ群に軍配が上がりました。

 

気になる副作用の方ですが、ニボルマブ群で比較的よく見られたものは、倦怠感(だるさ)、息切れ、筋骨格系の痛み、食欲不振、咳、吐き気、便秘。

 

重篤な副作用としては、肺・大腸・肝臓・腎臓・ホルモン分泌器官などの健康な臓器への重度の免疫介在性疾患、とのこと。

 

頻度や重篤度の詳しい情報はまだありませんが、安全性のプロファイル的には化学療法よりだいぶマシという印象です。

 

FDAはこの治験データを基に、優先審査を更に3ヶ月前倒しするスケジュールで承認に結びつけました。このクラスの薬剤がいかに期待されているかの裏返しでもあり、今後も他がん種への適応拡大を中心に要注目です。

 

※筆者は、ニボルマブに関し特段の利益相反(COI)はありません