「ありがたや〜」薬は高価な方が効く!?〜偽薬でのオモシロ実験〜

医療用医薬品の治験では、「偽薬(プラセボ)」というものが使われることが多々あります。

本物の薬と偽物の薬(偽薬)が用意され、被験者にはどちらかが投与されるのです。

 

どの被験者にどちらが投薬されるかは、くじ引きのようなもので、まったく誰にもわかりません。患者ももちろんですが、投薬を行なう医療者側もわからないのです。

 

どの患者には偽薬で、どの患者には本物だったのかということは、評価期間が終わってデータ解析の段階になって初めて明かされます。

 

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偽薬は言うなれば飴玉みたいなものですが、不思議なことに、偽薬でも治療効果が認められることが往々にしてあり、これを「プラセボ効果」と呼びます。

 

従って、新しい薬の効果を検証するときは、その薬の効果だけを見るのではなく、上記のように偽薬と比較する手法をとることで、その薬の真の効果がどれだけあるかを検証しているんですね。

 

さて、この「プラセボ効果」が薬剤の価格を高額に設定すると高くなるという、なんだか身も蓋もないお話が出てきました。 

  ■”'Expensive' placebos work better than 'cheap' ones, study finds”「高価なプラセボは安価なものより効果あり」( LosAngelsTimes、元ネタNeurology)

   

パーキンソン病の患者12名対象の実験です。(ちなみに、パーキンソン病のような精神神経系の疾患でプラセボ効果は出易いと言われています。)

 

被験者は、同程度の効果が想定される2種類の治験薬があるが、製造工程の違いにより、片方は1回の投与あたり1500ドル(18万円程度)、もう片方は100ドル(1万2千円程度)の値段であることが説明されます。

 

くじ引きの上、高価な薬を投与すると説明された群(高価群)と安価な薬を投与すると説明された群(安価群)で分かれるのですが、実際はどちらも同じ中身の偽薬。

 

で、2群間で運動機能の改善効果を比較してみると、高価群の方が安価群と比べ9%優れていたとの結果でした。

 

「9%」は小さい数字のように聞こえますが、元論文のアブストラクトを見ると、高価群で認められた効果は、通常治療で使われるドーパミン作動薬の効果と安価群の効果とのちょうど中間くらいのレベルとのことで、馬鹿にできません。

 

n数が少ないので決定的なデータとは言えませんが、「高価な薬=効く」という刷り込みは患者の中で結構強烈で、これがプラセボ効果を増強すると推察されます。

 

医療では「有難味」というおまじないが、欠かせないものなのかもしれませんね。