PD-1阻害剤の新データ
PD-1阻害剤については、以前も取り上げました。
■「ホンモノの免疫療法」の登場:PD-1阻害剤<イシュランメルマガVol.30>
この中で、私は、
Phase2試験での奏功率は22.9%(完全奏功は2.9%)と、治療効果としてそこまで”劇的”なものではない
ということを書きましたが、どうやらその時抱いていたイメージより、効果面での有用性も高い治療法のようです。
既存の標準療法であるダカルバジンにPD-1阻害剤であるニボルマブを乗せた場合とプラセボを乗せた場合とで比較すると、PFS(無増悪生存期間)で5.1ヶ月vs2.2ヶ月。OS(全生存期間)では未到達vs10.8ヶ月、という結果でした。
「未到達」というのは、まだ半分以上の方が生存されているため中央値に達していないということです。観察期間として16.7ヶ月はフォローアップされているため、ニボルマブ投与群のOSはそれ以上と判断できます。
ここで興味深いのは、PFSの改善幅以上にOSが改善しているように見られるところです。
今までの再発/進行の固形がん向けの抗がん剤の多くは、PFSの改善幅を大きく超えてOSを改善するというケースはまず見られません。
たとえば、現在世界で最も「売れている」抗がん剤であるアバスチンの大腸がんでのデータ(E3200試験)を見てみると、PFSは7.3ヶ月vs4.7ヶ月と2.6ヶ月延長に対し、OSは12.9ヶ月vs10.8ヶ月と2.1ヶ月の延長。
その他、多くの抗がん剤が似たような傾向ですし、場合によっては、「PFSは有意に改善するが、OSは有意には改善しない」薬剤すらあります。
ではなぜ、ニボルマブの場合、PFSの延長以上にOSの延長が見込まれるのでしょうか。
仮説としては、
・PD-1阻害剤は効果の発現がゆっくり。増悪はするがそのスピードを長期にわたって落とせる
・既存の薬剤より副作用によるダメージが軽いため、全身状態を良好に保てる
というようなことが考えられそうです。いずれにしても奥深そうなPD-1阻害剤。今後の発展を期待したいと思います。