肺がん領域で個別化医療の新たな進展:ROS1遺伝子変異陽性

個別化医療」はここ数年の抗がん剤領域でのキーワードですが、特に非小細胞肺がんは「個別化」が進んでいる領域です。

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ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチンイブ(タルセバ)など、EGFRという遺伝子に変異がある症例のみに効能が認められている薬剤群もありますし、クリゾチニブ(ザーコリ)のようにALKという遺伝子に変異がある症例のみに効能が認められている薬剤群もあります。

 

そしてこれらの非小細胞肺がんでの遺伝子変異の研究は、いずれも日本人科学者が世界をリードしていると言っても過言ではありません。

 

この領域ではROS1遺伝子変異やRET遺伝子変異といったものが、やはり日本人科学者により発見されています。

 

  ■「肺がんの原因となる新しい融合遺伝子を発見 -新たな治療薬実現への道を開く-」(がん研究会ゲノムセンター)

  

上記の内、非小細胞肺がんのROS1遺伝子変異陽性例にクリゾチニブがかなり効果がありそうだというニュースが出てきました。

 

  ■「ファイザーの抗がん剤が希少肺がんで有効性を示す」(REUTERS、元ネタESMO&NEJM) 

  

ROS1遺伝子変異陽性とは、非小細胞肺がんの1-2%が該当する非常に稀な症例です。

 

このROS1遺伝子変異が陽性の患者さん50名にクリゾチニブを投与したところ、腫瘍が縮小した患者が50人中36人で奏功率72%という結果が出ました。

 

さらに、9人で腫瘍の増大がストップしたということですから、9割(50人中45人)の患者で何らかの効果が認められたと言え、これは相当有望な数字です。

 

日本人科学者が大活躍されているこの領域での、今後の薬剤開発の進展に大いに期待しましょう。

 

 

<注意事項>

※ROS1遺伝子変異陽性例の非小細胞肺がんに対しての投与は、日本では承認されていません

※筆者は、非小細胞肺がん領域の複数抗がん剤メーカーと、過去1年以内に経済的取引関係があります