円高Welcome

円高である。
報道は、民主党政権の無策ぶりに焦点を当て、悲観的なものが目立つ。


でも、そこまで悲観的になる理由がわからない。むしろ、これは喜ぶべき事態に見える。個人的に円資産があったら、もっと泣いて喜んでいただろう。


喜ぶべき理由は3つある。



① 成長の見込める海外企業買収の大チャンス


1995年の80円を割り込んだ猛烈な円高時と比べたら、この程度の円高は対応可能なレベルだろう。あの当時は、自分も輸出で生計を立てていた”ニッポンの製造業”の当事者だったためその厳しさをいやというほど味わったが、その当時の製造業の円高対応力と今のそれとは全く異なる。


それくらい、今の製造業は海外に製造拠点を移している。海外事業活動基本調査の数字を見てみても、1995年当時の海外生産比率は8.3%だったのが、2005年には16.7%まで上がっている。日産のマーチが好例だが、この比率は現在ではさらに上がって20%以上になっているだろう。この数字はあくまでも金額ベースなので、生産量ベースで考えれば数字以上の対応力がある。


ある程度の抵抗力があるとすれば、今回の円高は海外の企業を買う千載一遇のチャンスだ。買えるうちに世界の資産を買って、キャッシュフローを生む仕組みを作っておく事が、今こそ求められる時はない。今後成長の見込める新エネルギーの技術を持つ会社を買うのもよいだろう。



② 人材招へいにもプラス


次に、円が強ければ海外から優秀な人材を呼び込むのにも、良い機会だ。”円”を稼ぎたいと思ってくれる人がいるうちが花。高齢化で労働人口がいずれにせよ足りなくなるのだから、今のうちに少しでも打てる手は打ちたいし、円高はそれを後押ししてくれる。



③ 世界的な穀物不作の年でも”買い負け”を避けられる


今年は猛暑が世界各地で起きており、穀物生産が大きく落ち込む恐れがある。その中で中国の消費量の急増が続き、これから”争奪戦”が起きる可能性は大きい。その際に、強い通貨を持っているという事は、絶対的に有利になる。



それにしても、全く逆の事態を考えてみて欲しい。猛烈な円安になった時のことを。製造業は多少潤うかもしれないが、石油も小麦も大豆も、何もかも大幅な値上がりでハイパーインフレ。めぼしい日本企業は海外企業にアッという間に買われてしまう。円を稼いでもナンボにもならないということで、外資系企業も外国人労働者も撤退、なんてことになったら、それこそ”終わりの始まり”だろう。


資産を持っている国にとっては、通貨高は基本Welcomeでしかるべき、という当たり前の認識をもうちょっと共有したいものだ。