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内田樹教授にモノ申す

内田樹という大学教授がいる。
この先生が書いているブログ「内田樹の研究室」、かなり人気のようなのだが、先日のエントリー「日本の人事システムについて」には怒りの念を禁じえなかった。


http://blog.tatsuru.com/2010/08/04_1026.php



脳科学者の茂木さんが日本の新卒一括採用システムへの批判を書かれていることに対し、内田さんは「多くの点で、私も同意見である。けれども、完全には同意できないところもある。意見が違うというのではなく、話を『切り出す順番』が違うということなのかも知れない。」と書かれている。


<以下、ブログからの引用>
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受験勉強すれば必ず点数は上がる。1時間勉強すれば、間違いなく1時間分上がる。
その意味では、受験というのは努力と報酬の相関がかなりの確度で予見される「合理的な」プロセスである。


けれども就活はそうではない。
面接で落とされた場合、本人には「どうして落ちたのか」がわからない。
採用する側は「どうして落ちたか」の理由を開示する責務を免ぜられているからである。


その結果、学生たちは、自分には自覚されていないけれど、ある種の社会的能力が致命的に欠如していて、それがこういう機会に露出しているのではないか・・・という不安を抱くようになる。
その不安が就活する学生たちをしだいに深く蝕んでゆく。


<中略>


現行の就活は、「優秀な人材の登用」よりもむしろ、日本の若者たちを「組織的に不安にさせること」を結果として生み出していることを、企業の人事担当者はもう少し自覚して欲しいと思う。
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ちょっと待ってほしい。


そもそも、世の中なんて不合理なことだらけだ。テスト勉強では推し量れない「相性」とか「活力」など、かなりアナログ的な感覚で採用が決まるなんてことはごく普通にある事だ。また、入社した後でも「好き」「嫌い」で決まってしまう会社の人事だって、実際にはいくらでもある。就職活動というのは、その社会の「当たり前の不合理」を体感する第一歩なのだ。それを否定したところで何も始まらない。


(ちなみに、点数がモノをいうのは、官僚の世界。公務員試験の”順位”が採用のバロメーターになる。でも、そんな点数で決める制度の方が、気持ち悪い。「無謬」を信じられるのであれば、そちらの世界へどうぞ、としか言いようがない。)


もう一点声を大にして言いたいのは、日本経済が現在のような状況にある中で、未だに「寄らば大樹」で大企業を志向し、安定を求めるような学生を育ててしまったのは、どこの誰なのだ、ということだ。


就職先の会社がまるで大学の”偏差値”と同じようなものがあるかのように錯覚している学生が多すぎる。「有名」(周りの人たちが知っている会社)であることに、如何ほどの価値があるのか。相も変わらず皆が志望する会社は良い会社、と思って自分も志望している人が多すぎるのではないか。


「ダイガク」とは、本来、長いものに巻かれるのではなく、自分で考えて「けもの道」を切り拓いていく気概と知性を磨く場であると思う。にも拘わらず、「自分のアタマで考え、行動できる」学生を育てられていない教育者は、自らを恥じよ、と言いたい。


少なくとも僕なら「きわだって優秀なわけではないが、育てようによっては、かなりいいところまで行きそうな潜在能力をもった人たち」にはこう教えたい。「君たち、優秀な人たちと同じ事をのべたんにやっていても勝てない。どうやって勝てるか。一点突破できるところは何か、を見つけなさい。」と。


もっと具体的に言うならば、キラリと光る技術を持っているが十分に海外展開できていない中小メーカー、なんか絶好の狙い目だ。社会起業家が創ったNPOで武者修行、だって良いだろう。


若い人の特権は、「チャレンジして失敗できる事」なのだ。「教えてもらう」事は所与ではない。自分で盗み取り、つかみ取っていくのが「プロフェッショナリズム」だということを教えられないものなのか。。。


学問の道を導く一方で、ゼミなどで人としての生き様を学生に見せて、人生観や職業観を育てていく、というのは大学教員の大事な仕事である。それを自ら放棄するような発言を教授が平気でしているのには、開いた口が塞がらない。


最後に、「シュウカツ」に励む若者たちに一言。今日の勝ち組は明日の勝ち組にあらず。そして、厳しい時期にもがいて就職した貴方達の未来は、楽して就職した世代の未来より長い目で見たらずっと明るい。人生は不合理なものだけど、それを他人のせいにして嘆く人より、悔しさをバネに自分を磨いていこうとする人の方が、はるかに充実した人生を歩むことができるんだよ。