サッカーW杯日本代表〜守りのスタミナ・マネジメントの先にあるもの〜

「掌返し」とはこういうことを言うのであろう。
岡田JAPANのW杯初勝利に対するマスコミのはしゃぎよう。まあ、どこの国でも散々叩かれても「勝って官軍」がサッカーの代表チームといえばそうなのだが。


残念ながらTLから既に消えてしまっているが、僕は今回の日本代表についてかなり期待できるということをイングランドとのテストマッチの前に、Twitterで呟いていた。


理由は、国内での期待感も国際的な評価も低かったこと。低俗なスポーツマスコミがやたらと期待感だけ煽り選手が変に舞い上がる状況になるより、低評価で「なにくそ」と思ってくれた方がずっと良い。


そして、サッカーでは「勝たなければいけない(勝ち点3をとらなければいけない)相手」と敵から思われるのは悪くない。そもそもなかなか点が入りにくいスポーツであり、勝たなければと思っていれば思っているほど、点が入らないことによるあせりで、番狂わせを喰らう確率も高い。


今回のカメルーン戦の勝因、色々と取り上げられているが、最大のものは「守りのスタミナ・マネジメント」だったと思う。


日本のディフェンスは元々、そんなに拙くはない。点を取れないことについてはずっと指摘されてきたが、トルシエ時代以来、組織的な守りはかなりできてきたと思うし、身体の割にはよく頑張っている印象が強い。ただ、前回のW杯のオーストラリア戦に代表されるように、強い相手とやると「残りの15分」で脚が止まってしまうという傾向があった。今年のオランダ戦やイングランド戦でも同じような傾向は見られた。


どうやったら「残り15分」の壁を乗り越えられるのか。よく、「ここが踏ん張りどころ」とか「集中力を切らさないで」とか精神的な部分のみを取り上げる論調が目立つが、選手だってその辺はわかっている。ボディーを効かされたボクサーみたいなもので、「動きたくても動けない」状況になってしまっている事自体が、問題の本質だ。


「ボディーを効かされない」ようにするには戦略が要る。その答えが、「引いて守る」&本田の1トップ、という陣形だったのだと思う。実際、陣形のバランスを崩さなかったのと本田が前線でタメを作れていたことにより、ボランチもDFもそれほど激しく「上下動」していなかったし、結果的に最後までかなり脚が動いていたように見える。


競馬で言えば、ハイペースで飛ばして後半馬群に沈むレースを繰り返していた先行馬が、ペース配分を覚えて勝てるレースをするようになった感じだ。最近は、選手の試合での走行距離のデータが出るようだが、この試合での前後半のバランスを過去のイングランド戦やオランダ戦のそれと比較して見れば、この仮説がより確かなものとなると思う。


さて次はオランダ戦。「どう戦うか」で色んな意見が出ているようだ。僕は守りの基本戦略は同じで良いと考える。しかし、それだけでは相手にプレッシャーがかからない。ここぞ、の時に前で「プレス」をかけに一斉に打って出て相手を慌てさせられるかどうかが、成功のカギと見ている。


「守りのスタミナ・マネジメント」でリスクをコントロールする戦い方は覚えた。次に、意識的に勝負処でリスクを冒す戦いがチームでできるようになった時、本当に世界を驚かすことになる。