がんの痛み〜痛ましいニュース〜

がんの痛み治療の普及啓発に努めてきた身として、何とも痛ましくやるせない事件のニュースが入ってきた。


読売ニュースオンラインに出ている、「説得5時間、『ごめんなさい』と男性投身自殺」(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100120-OYT1T00435.htm)、である。


記事によれば、西伊豆で男性ががんの痛みに耐えかねて身を投げようとするのを周囲の人が説得して止めようとしたが、止めきれなかったということである。


この男性の主治医が誰だかは存じ上げないが、その心境やいかばかりか。はたして、この男性が痛みを主治医や看護師に対してどの程度訴えていたのか、真相はわからないが、ゼロということは無かろう。しかし、外来の短い診療時間の中で、あまり真剣に取り合わなかったため、患者さんも訴えても無駄とあきらめてしまった、というような構図がそこになかったか。


疑問に思えることは多々あるが、マスコミにはこの際是非、徹底的に問題の背景を洗い出してもらいたい。男性が通っていた病院で一体どのように疼痛管理が行なわれているのか、いないのか。件の男性に対してどのような治療がされていたのかいなかったのか。


現代で麻酔をかけずに手術をするようなことがあったら、病院は訴えられるだろう。がんの痛みも、あるのがわかっていて対処してなかったとしたら、罪は同じくらい重い。


こんな事件が2度と起きることが無いように、メディカル・インサイトとしても力を尽くしていきたい。