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病院経営者とプロスポーツのGM

幻冬舎から最近出版された「患者思いの病院が、なぜつぶれるのか?」(渡辺さちこ著)、がなかなか面白い。


渡辺さんは株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)という病院に特化した経営コンサルティング会社の社長。GHCは、特にDPCデータの分析システムに強みがある会社で、同書の中でもDPC導入が病院経営上何を意味するのか、といった観点がかなりの比重を占める。


僕が一番面白いと感じたのは、実はDPCがらみではない部分で、「救急患者は絶対に断らない」というポリシー・戦略を持った相澤病院で、いかにしてこの戦略を具現化させるか、というくだりだった。


「救急患者を断らないためには、夜間の手術ベッドを空けておく必要がある」⇒「ベッドを空けておくために、夜間までずれこむ手術を無くす」⇒「ずれこみを防ぐためにベッド稼働率の低い朝に手術をスタートできる体制をつくる」⇒「慣習的に行なわれていた役割分担を見直す」


おおよそこんなところが全体像だが、問題の真因に食い込んでいく様がよくわかり、病院コンサルティングの面白みがよく表現されていると感じた。


日本の病院経営で何と言っても問題なのは、経営者が経営的トレーニングを受けていない"医師"である、というガバナンスの在り方であろう。


プロスポーツの世界を見ても、それを強く感じる。チームの経営マネジメントを担うGMと、あくの強い現場の選手をまとめるリーダーである監督とでは、自ずから役割が違うのである。監督は元選手でないと務まらないというのは解るが、GMが元選手でないといけないということはないだろう。むしろ、客観的なデータ分析を基に、経営的にBestな人材を揃え、オカネの手当てをやり繰りし、Marketing施策を打っていくのは、経営のプロでないと務まらない。


医師をはじめとした"プロフェッショナル"が組織内にたくさんいる病院経営についてもまったく同じ議論が当てはまるはずであって、現在の惨状を見るにつけても、今後の日本の病院経営が経営プロフェッショナルの手にシフトしていかざるをえないと考える。ちなみに、渡辺さんはこの点に関して、MBAホルダー的な人材を高額の給料で雇い入れることの難しさ(組織内のアレルギー反応)を本書の中で指摘しているが、インセンティブを工夫することと人事権を持たせることが実現の鍵だと考える。


日本のプロ野球も、経営環境が厳しくなってきてから、楽天の例を見るようにGMを起用することにより変わり始めた球団が出てきた。医療界も変革の時がすぐそこにやってきているのだ。