浜松でキラリと光った、乳癌学会学術総会

先週は、浜松で開催された21回乳癌学会学術総会に参加したのだが、浜松グルメもさることながら、久しぶりに「企画力」を感じる学術総会だったのが印象に残った。何が具体的に良かったのかというと、

・メインプログラムが3つの会場に集約されて見どころがはっきりしていた

・真の意味で患者に開かれた学会だった

の2点に尽きる。

 

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【見どころが明確なプログラム】

今回の学会の中日の日程表が↓。

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前述したように、メインプログラムが第1会場(青)・第2会場(緑)・第4会場(ピンク)に集約されているのがよくわかる。集約の仕方も筋が通っていて、第1会場は治療、第2会場は検診・診断、第3会場は看護・症状ケアと、非常に明快。

これにより、通常の学会の学術集会よりいわゆる「口演」の数は大きく減っているが、その分質も担保されており、“外れ”は殆どなかった。同時に、「あのセッションXXでしたよね~」という会話がいろんな立場の人にとってやり易いものとなり、わざわざ多くの人たちがひとところに集まって学会を開催する意義を大いに感じ取ることができた。

 

【患者に開かれた学会】

乳癌学会は、元々、患者にかなり開かれた学会だ。他学会では聴講が適わないような医師向けの内容のセッションでも、乳癌学会の学術総会では患者さんがフリーに参加できる。ガイドラインも、「患者向けのガイドライン」を持つ、私が知る限り唯一の癌関連の学会だ。

「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」

ただし、乳癌学会では患者さんもフルに参加費用を払っていたのが今までだった。2万円もの参加費を自腹で払うというのは、相当ハードルが高い。今年はそれが15千円に割り引かれていたとの話。粋な計らいではないか。

 

もう一つ画期的だったのが、「患者セミナー」が公式プログラムとして登場したこと。元々、患者さんたちが心ある医師と共に、学会で出てきたトピックスを、患者さんにもわかり易い言葉でオフサイトの会場でこじんまりと解説・共有するという試みがあった。

私も参加してその意義を大いに感じていたのだが、いかんせん手弁当で皆さんやられていたのでそう大きな規模ではできなかった。それが、今年は学会の公式プログラムとなって、300人程度は入る会場がホテルに用意され、ぎっしり満員になっていた。関係者の方々がこの企画自体をここまで育てられたことに敬意を表したいし、同時にこれだけの規模で公式プログラムとして採択したのは乳癌学会の英断だと思う。

 

ちょうどこの学会期間中にTOBYOの三宅さんとやりとりする機会があり、今後、PROPatient Reported Outcome)が注目されていくだろうという話を伺った。

この仮説が正しいとすると、「患者さんが医療者から学ぶ場」になるだけでなく、「医療者が患者さんからも学ぶ場」に進化していくというのが、学術総会の未来形ではなかろうか。その意味で、乳癌学会の今回の取り組みはその動きを先取りしたものとも言える。

 

今回の学術総会の成功を心からお祝いすると同時に素晴らしい学会に参加させて頂いたことを感謝申し上げたい。