「がんサポート」への疑義〜がん免疫特集を読んで〜

「がんサポート」というがん患者向けの月刊誌がある。「信頼度No.1のがん実用誌!」と銘打っており、確かに良質な記事も多く、私も仕事柄愛読している雑誌だ。


しかしながら、最近発売されたがんサポート9月号の内容は酷かった。「がん免疫特集」の号だったのだが、巻頭の記事が、「膵がんなどの難治がんでも効果が・・・・・・WT1ペプチドを用いた樹状細胞ワクチン療法の最新成果」で★3つ付いているのだ。


この★の数は、「1個の記事は動物実験レベル、2個は人体での臨床試験で低いレベル、3個は人体での臨床試験で最も高いレベルで検証されたデータに基くものであることを表しています」、とされている。


「今年5月、免疫療法に画期的な出来事が起こった。米国において、がんの治療用ワクチンが初めてFDAにより承認されたのだ。しかし、日本にはそれよりもさらに進んだワクチン療法、免疫細胞療法が行なわれている。それを紹介しよう」として、樹状細胞ワクチン療法が詳細に取り上げられている。


しかしながら、文中で認められる「エビデンス」は、何の論文にも載っていないセレンクリニックでの49例の臨床成績と、ミッドランドクリニックでの2つの症例報告。しかも、この2つの症例では良く見ると化学療法が併用されていて、化学療法と樹状細胞ワクチンのどちらが効いたのか全く分からない。


この程度のエビデンスに基いた治療法を、FDAで承認された治療法より優れたものであるかのような記述で紹介し、あまつさえ樹状細胞ワクチン療法を行なっている医療機関をご丁寧に連絡先付きでリストで紹介しているのは、言語道断だろう。これでは、この治療法のメーカー(テラ株式会社)とクリニックの体の良い宣伝記事だ。


どうでもよい雑誌であれば、ここまで文句は言わない。しかし、「がんサポート」は曲がりなりにも日本で一番がん患者に読まれている専門誌のはず。そして、「編集方針」として、


「切実な問題を抱えるがん患者さん・ご家族の方々にとって、情報は命そのものと言っても過言ではありません。その情報は絶対に、いかがわしい、いい加減なものであってはならないと考えます。がんサポートは、世界最新の科学的根拠(エビデンス)に基いた視点から、良質な正しい医療情報を厳選し、提供しています。エビデンス(Evidence)とは、根拠があって明白な証拠、を意味する英語。わがエビデンス社は、常に信頼の置ける情報と知識を提供することを使命と考えています。」


と掲げている雑誌なのだ。


これでは看板に偽りあり。
深見さん(エビデンス社社長)、今回の特集はいくらなんでも拙いんじゃないですか。