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イシュラン編集長が選ぶ2016年のがん医療界5大ニュース

今まで年末恒例でお届けしていた年間のがん医療界「5大ニュース」ですが、今年は年始とさせていただきます。

 

ちなみに、過去2年間の5大ニュースは↓のような感じ。

 

<2014年>

第1位:ホンモノの免疫療法の登場

第2位:近藤誠の怪進撃

第3位:C型肝炎の治療が大進化!肝臓がんは激減へ

第4位:前立腺がんに新薬続々登場

第5位:マンモグラフィの意義、大いに揺らぐ

 

<2015年>

第1位:世の中の「がん」への関心が一気に上昇〜北斗晶さん現象〜 

第2位:抗がん剤の超高額化の波止まらず、「Value」が求められる時代へ 

第3位:”ホンモノの”免疫療法時代の幕開け 

第4位:待望のがん患者の全国組織「全国がん患者連合会」設立 

第5位:反論続々、近藤誠医師の”怪進撃”に待った!

 

さて、2016年はどうだったでしょうか?

 

 

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第5位:小林麻央さん、乳がんを公表

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2015年の第1位は、世の中の「がん」への関心が一気に上昇〜北斗晶さん現象〜、でしたが、2016年も多くの有名人の方ががんの罹患を公表されました。

 

私の記憶にあるだけでも、南果歩さん(乳がん)、小倉智昭さん(膀胱がん)、渡瀬恒彦さん(胆のうがん)、、、

 

そして、誰よりも世間が大騒ぎとなったのが、6月にあった小林麻央さんの乳がんの公表でした。

 

news.biglobe.ne.jp

    

 

麻央さんの病状の公表後、夫の市川海老蔵さんの再三のお願いにも拘らず不躾な取材攻勢が続き、私の周囲の患者さんたちからも、本当にそっとしてあげて欲しいという声が数多く上がっていました。

 

そんな中、麻央さんは、9月からブログをスタートします。

 

ameblo.jp

   

 

 

ブログが公表されて以来、報道機関の記事はほぼすべてこのブログ記事がベースに書かれているように見受けられます。芸能マスコミから主導権を見事に取り戻したと言えるのではないでしょうか。

 

ブログを書き始めた日に、麻央さんはこう記しています。 

 

>>

乳がんであることが突然公になり、

環境はぐるぐる動き出しました。

 

そこで、

これまで以上に病気の陰に隠れようとして

 

心や生活をさらに

小さく狭いものにしてしまいました。

 

これは自分自身のせいです。

 

 

私は

力強く人生を歩んだ女性でありたいから

子供たちにとって強い母でありたいから

 

ブログという手段

陰に隠れているそんな自分とお別れしようと決めました。

>>

 

今日現在も進行形で継続しているこのブログは、真の強さと優しさを持った麻央さんの日常を毎日伝えています。これからも暖かく見守っていきたいですね。

 

 

 

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第4位:受動喫煙ががん罹患リスク因子として認定。防止の法制化への流れできる

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国立がん研究センターが8月末に発表した、受動喫煙での肺がん発症リスクのニュース、かなり多方面で大きく報道されました。

 

www.nikkei.com

      

 

この「1.3倍」という数値は、メタアナリシスと呼ばれる手法で、過去に出された研究結果を統合して解析した結果から導かれており、科学的には「確定的」と言って差し支えありません。

 

これに対し、JTが反論し、さらに国立がん研究センターが再反論するという、ちょっと異例の展開になりましたが、JT側が(当然ではありますが)完全に論破されてしまいました。

 

gigazine.net

   

 

受動喫煙は、JTが言うような「迷惑」や「気配り、思いやり」の問題ではなく、「健康被害」「他者危害」の問題であるという”国がん”のスタンスには、私も強く同意します。

 

この追い風を受け、10月には、ついに厚生労働省受動喫煙対策の法制化への具体的な動きを起こします。

 

www.asahi.com

   

 

「主な公共施設で建物内禁煙とする一方、飲食店などサービス業の施設は原則禁煙とし喫煙室の設置は認める」という現行案は、非常にリーズナブルではないでしょうか。

 

是非一日でも早く、法案が可決されることを願います。

 

 

 

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第3位:医療情報サイトWELQが大炎上⇒閉鎖に

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先月のメルマガでもお届けしましたが、DeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ」が大炎上の末、閉鎖の憂き目に遭いました。

 

toyokeizai.net

  

 

医療情報サイトがこれほどまでに世の中を揺るがしたのは、初めてのことではないでしょうか。

 

WELQの手法については、今回の騒動の真の火付け役と言える、永江一石さんが詳しく解説していますので、ご興味ある方はご覧下さい。(大手マスメディアの報道は基本的に、この後追いです)

 

 ■「DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回)」 https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30141

 

 ■「【告発も追記】やってはいけない一線を越えたDeNAのウェルク(Welq)をとりあえず直ちに閉鎖すべき理由(シリーズ第2回)」 https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30166

 

 ■「東大薬学部五十嵐准教授がDeNAのウェルク(Welq)をさくっと検証した結果(シリーズ第3弾)」 https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30231

 

 ■「パクリWebスパムのウェルク(welq)はどのようにして誕生したのか(シリーズ第4回)」 https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=30247

 

このWELQ問題、「医療」というものを軽く見て、患者さんのリスクや不利益を無視した形で短期的な利益最優先で事業を展開すると、一時はうまくいってもいずれは馬脚を現すことになるという良い教訓ではないかと思います。

 

イシュランにとっても「他山の石」となった出来事でした。

 

 

 

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第2位:がん対策基本法の改正法案がついに成立!

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12月9日に、「がん対策基本法の一部を改正する法律案」が衆議院で可決され、法案が成立しました。

 

www.nikkei.com

   

 

この法案、全会一致で可決され、非常にスムーズに事が運ばれたように見えますが、実は成立がかなり危ぶまれる状況もありました。

 

実際、昨夏の通常国会では、審議日程の確保ができないということで、同案の提出が一度キャンセルになって「振り出し」に戻ってしまったという経緯があります。

 

今回も、参議院での審議が滞りかけた中、全がん連やがん議連を中心とした関係者の必死の努力が実り、なんとか審議に至りました。

 

改正法案のポイントは、下記の3つになります。

 

1)患者の雇用の継続や円滑な就職に対する配慮が求められることが法律に明記された

2)治療オプションの少ない希少がんや難治性のがんにも光が当たった

3)がん教育の推進が明記された

 

一点目が、特に働き盛りの世代にとって重要な話です。治療費も生活費も重くのしかかる中で、収入の安定的な継続というのはまさに死活問題ですから。

 

しかしながら、残念ながら解雇を迫られる等で離職せざるを得ないというのは、よくあるケースなのです。

 

news.yahoo.co.jp

   

 

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など、革新的ではあるが高額な治療が主流を占めつつある中、がんは「お金のかかる慢性疾患」化していくことが中長期的に想定されます。

 

その意味で、雇用の継続や円滑な就職に対する配慮が求められることが法律に明記されたことは時宜にかなっており、実のある対策が官民共に策定・実行されていくことを期待したいと思います。

 

   

 

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第1位:超高額薬剤にメス。オプジーボ薬価は半減へ

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超高額な抗がん剤が次々に出てくる中、本当にそれだけの「価値」があるかどうかが、厳しく問われる時代に入ってきた、というのが2015年の5大ニュースの一つでした。

 

2016年はその流れが日本で大きく顕在化した年だったと言えます。

 

まず、4月より医薬品の薬価算定における費用対効果評価の試験的導入が始まりました。

 

  ■「【中医協総会】「ソバルディ」など7品目‐費用対効果の対象決まる」(薬事日報) 

    

対象となったのが、慢性C型肝炎治療薬(5品目)、乳がん治療薬のカドサイラ、悪性黒色腫・非小細胞肺がん治療薬のオプジーボです。

 

特に、話題の免疫チェックポイント阻害剤であるオプジーボが、再発・進行の非小細胞肺がんで承認されるにあたり、そのあまりの薬価の高さが医療保険システムに与える影響に対して、医療界の中からも疑念の声がわき上がりました。

 

代表的なのが、現役の肺がん治療医でもあり医師作家としても著名な里見清一さんの論です。

 

www.dailyshincho.jp

  

 

まあ、肺がんの場合、1人当たりの薬剤費が年間3500万円ですから、これはさすがにあり得ないレベルです。

 

そして、、、

結果として、オプジーボは「半額」となりました。

 

toyokeizai.net

  

 

しかし、元が高すぎるため、半額になったとはいえ依然として「超高額」な薬剤であることは変わりありません。

 

この先、薬価面での調整は引き続きあるとはいえ、超高額な抗がん剤を、「どう使うか」「誰に使うか」といった議論は避けて通れないと考えます。

 

深く突っ込んだ論考はまた別途出したいと思いますが、いずれにせよ「費用対効果」が日本の医療でも普通に語られる時代に突入したことだけは間違いありません。