エビデンスが必要なのは医療だけじゃない〜大阪の事故とGoogle車〜

あるモノを使うことで、日本だけで年間4000人以上が亡くなられ、70万人の怪我人が出ています。

 

その「モノ」とは自動車です。

 

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私もちょくちょく出入りする大阪の梅田で、大変痛ましい事故が起きました。

 

daily-news.jp

  

 

原因は、その後の報道にもありますように、この車の運転手が運転中に「大動脈解離」を発症したことにあります。

 

「大動脈解離」によるいわゆる「突然死」は、文字通り予知できるものではありません。

防ぎようがなかった事故だと言えましょう。

 

過失のあるもの・ないもの含めて、人間が運転する限り、一定の確率で事故は起き、先ほどの年間4000人以上の死者と70万人の負傷者を生み出している訳です。

 

そこで、本来なら「自動運転」の議論がもっと盛り上がるべきところだと思うのですが、こんな記事が出てきました。

 

 ■「自動運転の夢遠のくグーグル過失事故 人間、AI…責任は誰に? 難題の好例」(SankeiBiz)

  

 

この記事によれば、グーグルの自動運転車は、累計で224万キロの運転を行なってきていて、今回が初めて自らの過失により起きた事故。しかも、誰も怪我はしていません。それまで起きていた17件の事故はすべて、人間が運転している車側に過失がありました。

 

2009年度時点で、日本国内でのあらゆる車の走行距離を足すと大体5000億kmくらいになります。(出所:国土交通省 自動車燃料消費量統計)

 

これに対し、同時期の人身事故の発生件数は約70万件、物損数は約700万件です。

(出所:日本損害保険協会)

 

ということは、

 

 ・人間の車の運転:70万kmで人身事故1件。物損10件

 ・Google車の運転:224万kmで人身事故0件。負傷者0。物損1〜2件(自分も相手も壊れていたら2件カウントとなる)

 

となります。ここから推察されるのは、Google車のような自動運転車のみの世界になれば、現時点の技術でも事故を現状の1〜2割程度にまで引き下げられるということです。

(米国のカリフォルニアの道路と日本の道路とでは環境は異なるため、ここは少しラフな議論ではあります。)

 

また今回のような事故が起きれば対策が確実に打たれますので、事故は更に減っていくでしょう。

 

それが、この記事の見出しの「自動運転の夢遠のく」ってなんなんでしょう。

人が運転するのは事故があってもよくて、機械だとゼロでないといけないってことなんですかね?

 

「危険性」は絶対評価ではなく、相対評価で考えるべきです。

 

例えば、人が手術すると1000件に1件はミスが起こり、ロボットが手術すると1万件に1件同等のミスが起こるとしたら、ロボットにやらせるって話になるでしょう。

 

医療において「Evidence Based Medicine(科学的事実に基づく医療)」が基本なのと同じく、政策や報道も「Evidence Based」で論じて頂きたいものです。