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“Shared Decision Making”〜がん治療の選択スタイルが変化する〜

前回のメルマガでASCO(米国臨床腫瘍学会)の話題をお届けしましたが、今年のASCOで「免疫チェックポイント阻害剤」と共に大きなテーマとして取り上げられたのが、「Value」のコンセプトです。

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いきなり、「Value」と言われても何のことだかわかりにくいですね。

 

大雑把に言うと、その治療で見込める「効果」から「副作用」を差し引いた価値が、治療にかかる費用と見比べてどうか、というのが「Value」の考え方です。

 

ASCOは、この「Value」の概念を、医師と患者で行なう治療方針の決定の場に持ち込むべきと考えています。その理由は大きく2つあります。

 

1つは、「がん治療にかかるコストが格段に高額になってきたこと」です。

 

このメルマガでも何度か取り上げているように、昨今の分子標的薬は年間のコストが数百万円レベルですし、最近では1000万円を超えるような超高額の抗がん剤まで出てくるようになりました。

 

医療保険のカバーが限定的な米国だと、「がん治療費で破産」ということも現実としてあり得ます。

 

そうなると、「Financial Toxicity(財務毒性)」という言葉まででてきている通り、経済面での負担は、治療選択の上で無視し得なくなって来ているというわけです。

 

もう1点は、医師と患者との間での治療方針の決定方法が、「Shared Decision Making(共同意思決定)」のスタイルに変わりつつあるということです。

 

患者さんにとって、同じ副作用でもまったく違う意味を持ってきます。

 

たとえば、「手足のしびれ」は楽器の演奏を生き甲斐や生業にしている人にとって、そうでない人と比べたら重大さが異なります。

 

「脱毛」もそうですね。ある人にとっては、命が助かる確率が上がるのであればなんてことない人もいれば、死ぬほど嫌という人もいるでしょう。

 

上述した経済面での事情も、当然患者さん個々によって変わってきます。

 

そんな患者さん個々の嗜好や生活の事情に合わせた形で、その時ベストと考えられる治療方法を医療者と患者が共に選択していくスタイルが、「Shared Decision Making(共同意思決定)」です。

 

ASCOが「Value」を推し進めるということは、今後「Shared Decision Making(共同意思決定)」が治療意思決定スタイルの本流になっていくということです。

 

今の日本ではIC(Informed Consent)、つまり「治療内容の説明をして患者さんの同意を取り付ける」スタイルがまだ主流ですが、それだと患者さん個々の思いや事情が反映された治療になるとは限りません。

 

日本でも「Shared Decision Making(共同意思決定)」のスタイルが普及するよう、私も後押して参ります。