日経ビジネスも信用なりません⇒「なぜ関空に世界のがん患者が集まるか」
日経ビジネスからまたもや”怪しい”記事が出てきました。
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この記事、ゲートタワーIGTクリニックなる医院の院長、堀信一医師のインタビューで成り立っています。
がん治療周辺の話はかなり詳しいはずの私も聞いたことの無い施設で、「???」とクエスチョンマークが頭を飛び交いながら熟読しましたが、実に酷い内容の記事でした。
この施設で集中的に行なわれているのが、「血管塞栓によるがん治療」。
「血管塞栓によるがん治療は、手術のできない末期の方の救いになる治療法というイメージがありますが、どのようながんに向いているのでしょうか? また、どのような症状の方に向いているのでしょうか?」
という問い(そもそもこの問い自体、”末期の方の救いになる治療法というイメージ”なんていう極めてバイアスがかかった質問ですね)に対し、
「部位別にいうと、乳がん、肺がん、肝臓がんなどを得意としています。このほかに、卵巣がん、子宮がんなども血管内治療に向いています。最近では、胃がんの治療成績が上がっています。」
なんていう回答になっているのですが、上がっているという「治療成績」はこの記事にも、IGTクリニックのHPにも見当たりません。
堀先生の業績なるものを眺めてみても、どこそこで講演したというような話はやたらと入っていますが、きちんとした論文は見当たりません。(まっとうな科学者であれば、論文以外のものを「業績」とは呼びません)
ちなみに、血管(動脈)塞栓術というのは、肝臓がんの治療としては日本では標準治療の一部ですが、乳がんなど他のがんでは標準治療ではありませんし、そうした治療をしているという話はまっとうな医療機関ではまず聞きません。
調べてみると、聖マリアンナ医科大学で投与実績がありました。
■乳癌動注療法(聖マリアンナ医科大学放射線医学HP)
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皮下埋め込み型リザーバー鎖骨下動注化学療法は、全身への抗がん剤投与が困難な患者様、または全身化学療法では効果が得られない患者様に対して効果が期待できる新しい治療法です。当施設では、本法の安全性と有効性を確認するために、現在臨床試験を実施しております。
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そうです。聖マリアンナ医科大学でも「臨床試験を実施」してその有効性や安全性があるかどうかを確認している段階なのです。
まっとうな臨床試験すら実施していないようなエビデンスの無い保険外の治療法を、広告まがいの記事でデカデカと掲載してしまうというのは、きわめて由々しき事態。
日経ビジネス、本当にどうしちゃったんでしょうね…