米国で初めて承認された「バイオシミラー」ってなんじゃらほい?

「バイオシミラー」という言葉をご存知でしょうか?

 

医薬品には低分子化合物と高分子化合物があります。

 

・低分子化合物:設計図(化合物の構造)が簡単に書ける物質

・高分子化合物:化合物の構造が複雑すぎて設計図として表現しきれないような物質。タンパク質など

 

という違いがあります。

高分子化合物の医薬品は、バイオ医薬品と呼ばれたりもします。

 

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いわゆるジェネリック医薬品というのは、低分子化合物の先発医薬品とまったく同じ化合物で作られた医薬品のことです(ただし、添加物は異なるケースあり)。薬価的には先発品の60%が基本。

 

まったく同じ化合物ですから、効果や安全性も先発品と同じと仮定し、治験で効果と安全性を確かめるプロセスは飛ばして承認されます。

 

これに対し、バイオシミラーは、高分子化合物の先発医薬品と”似て非なるもの”です。構造が複雑すぎて完全に同じものを作ることができないんですね。薬価的には先発品の70%が基本。

 

似ているとはいえ異なる化合物なので、治験で効果と安全性が先発品と同等であることを確認する必要がありますし、発売されてからも一定期間の市販後調査という、先発品同様のプロセスが必要です。

 

そんな「バイオシミラー」が米国で初めて承認されたというニュースが入りました。 

  ■「米FDA 初のバイオシミラー フィルグラスチムを承認」(ミクスOnline)

   

フィルグラスチムはG-CSF製剤という種類の薬剤で、抗がん剤(化学療法)の副作用でよくある好中球減少症に使われます。

 

米国では初承認ということなのですが、日本ではバイオシミラー、実はすでに市場に出回っています。

上記のフィルグラスチム(製品名:グラン)やエポエチナルファー(製品名:エスポー)などです。

 

このバイオシミラー登場の流れは、抗がん剤市場にとっても大きな話です。

 

というのは、ベバシズマブ(製品名:アバスチン)やトラスツズマブ(製品名:ハーセプチン)など、

分子標的薬の多くが「バイオシミラー」の対象となる「バイオ医薬品」の範疇に入るからです。前項で取り上げたPD-1阻害剤もそうです。

 

これらの高額な薬剤のバイオシミラーが「本当に先発品と同等の効果と安全性を実現できるのか」は大前提としてもちろん重要ですし、「どの程度普及し医療費の削減に貢献できるか」という医療経済的観点からも重要になってきます。

 

ということで、「バイオシミラー」という単語、今後「ジェネリック医薬品」と同じくらいの重みを持つ言葉として、是非ご記憶頂ければと思います。