タミフルはインフルエンザ治癒を”1日”早める

今年はインフルエンザの「当たり年」のようで、私の周囲でバタバタと倒れる人が続出しています。

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さて、代表的なインフルエンザ治療薬の一つとして、「タミフル」という薬があります。この薬はかつて異常行動や転落死を引き起こしているのではないかと、マスコミを大いに賑わせました。

 

また、医療者によっては、「インフルエンザは放っておけば治るのだから、投薬は不要」と言い切る方もいらっしゃいます。

 

そんな中で、実際のところその効果と安全性はどうなんだろうという研究結果が出てきました。 

  ■”Tamiflu Cuts 1 Day Off Average Flu Bout, Study Finds”「タミフルはインフルエンザ治癒を1日早めることが判明」(Healthday、元ネタLancet)

    

まず、この研究、資金拠出が利害関係のない専門家集団で成り立つ「Multiparty Group for Advice on Science 」財団でされているものなので、妙なバイアスがかかっている心配はなさそうです。

 

記事によると、この研究では1997年から2001年にかけて行なわれた9本(4300名以上)のプラセボとのランダム化比較試験(前項で説明したような「くじ引き」タイプでの試験)の結果を解析。

 

結論としてタミフルは偽薬(プラセボ)と比較し、

 

・インフルエンザの治癒を5日間から4日間に1日程度早める効果が認められる

・肺炎などの下部呼吸器感染症の罹患リスクを44%下げ、いかなる理由の入院リスクを63%下げる

・吐き気のリスクを3.7%、おう吐のリスクを4.7%上げる

 

ということがわかりました。

 

治癒までの日数の「1日」の短縮を大きいと見るか小さいと見るかは人それぞれでしょう。

本件でそれより大事なのは、重症化を防ぐ効果にあると思います。

 

健康な成人であれば、タミフルの投与は保険適用するほどの意味はないが、高齢や呼吸器疾患などのリスク要因のある患者については、大いに意味あり、というのが今の時点での私なりの解釈です。

 

私がインフルエンザに実際になったらどうするか、ですか?

「1日の短縮」は大きいので、迷わず処方してもらいます。「時は金なり」ですので!

 

※本件に関し、筆者はロシュ社/中外製薬との間でCOI(利益相反)はありません。また、通常このメルマガでは製品名ではなく成分名を使いますが、本項ではタミフルが人口にあまりに膾炙した薬剤のため、製品名を使っています。