膀胱がん治療で30年ぶりのブレイクスルー!

1年ほど前に、泌尿器科医の友人2名と飲んでいた席で出た話です。

 

「腎がんは、最近やたらと新しい薬が出てきて、使いこなすのが大変なくらい。前立腺がんも画期的な新薬がもうすぐ相次いで出てくる。でも、膀胱がんだけはねえ… 膀胱がんって、俺たちが医者になった頃、つまり20年以上前から薬物治療が全然変わっていないんだよね。」

 

その膀胱がんで、ついに新しい薬剤が登場しそうな気配です。

 

  ■”Bladder Cancer Breakthrough Treatment Developed after 30 Years”「膀胱がん治療で30年ぶりのブレイクスルー」( TECH TIMES、元ネタNature)

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既存治療の手が尽きた進行膀胱がんで、PD-L1陽性患者30名に対し、ロシュ社が開発したMPDL3280AというPD-L1阻害剤を投与したところ、

 

・投与6週後には43%の患者で腫瘍縮小

・投与12週後には52%の患者で腫瘍縮小

 

と非常に有望な結果でした。

 

さらに主な副作用は食欲減退と倦怠感(だるさ)程度ということで、この結果をもってFDA(米国版の厚生労働省)で画期的薬剤との認定を受け、次の大規模臨床試験に進むことになりました。

   

以前からのメルマガの読者の方は、「PD-L1阻害剤」という単語に「あれっ?」と思われたかもしれません。

 

ご明察です。「PD-L1阻害剤」は、

 

  ■イシュランメルマガVol.30 「ホンモノの免疫療法」の登場:PD-1阻害剤

 

  ■イシュランメルマガVol.36「PD-1阻害剤の新データ」

   

などで取り上げました「PD-1阻害剤」と、言うなれば「兄弟分」のようなクラスの薬剤です。

 

PD-L1というタンパク質が免疫細胞の表面にあるPD-1と呼ばれる受容体にくっつくと、免疫細胞が活性化できなくなってしまいます。そうなると、免疫細胞が異物を攻撃するミサイルのような「抗体」を発射できなくなってしまうんですね。

 

「PD-1阻害剤」は受容体側に、「PD-L1阻害剤」はタンパク質側に働きかけて、この免疫細胞への邪魔をできなくなるようにするわけです。

 

いずれにせよ、膀胱がん患者にとっては朗報となり得るお話ですし、PD-1阻害剤と同様、PD-L1阻害剤も「ホンモノの免疫療法」として、今後その動向に要注目です。

 

※筆者はロシュ社と本件に関わる経済的な取引関係はありません