臨床睡眠医学会にホンモノの学会の姿を見た
月初に、日本臨床睡眠医学会(略称ISMSJ)の学術集会で、1時間以上もの講演をするという珍しい機会を頂きました。
そもそも学術的な学会のしかも「教育プログラム」というのに、こんな軽いノリのお題で良いのかなと危惧していたのですが、ランチ後の魔の時間帯にも拘らず、眠そうにされている方は一人もお見かけしませんでした。
あとで伺った話ですが、先生方も普段接している製薬会社の人間が、一体どういう考えに基づいて行動しているのか実はほとんど理解していないので、とても興味深かったということです。
まあ、先生から見ると、ある時を境にそれまでよく来ていたMRがぱたっと姿を見せなくなったり、製薬会社が打つTV-CMで急に外来が特定の疾患の患者で溢れたり、と不思議な現象が起きますからね...
ところで、この学会の面白いところは、講演の後にたっぷり質疑応答の時間が取られているところです。
1時間半の枠の中で、1時間程度でプレゼンを終了してあとは質疑応答にというリクエストを頂いていて、そんなにたくさんの質問が出るものかと半信半疑でいたら、出るわ出るわ。
次々に質問やコメントに立たれる先生が続き、演者としても「喋り甲斐」のある時間を過ごせました。
しかも、質問者の方は納得いくまで引き下がらずに質問を続けられたり自説を述べられたりする。
そしてこの姿こそが、学会の本来あるべき姿なんだろうなと、強く感じた次第です。
実は、日本の臨床医学系の学術集会に行くと、ディスカッションの時間といっても申し訳程度に取られているだけで、フロアから質問が出てもお決まりの高名な先生から1つ2つということがよくあります。
「パネルディスカッション」のセッションですら、一体何が「ディスカッション」されたのかさっぱりわからんという消化不良感を抱えたまま終わることがしょっちゅうです。
ひるがえって、臨床睡眠学会は、その場で生の議論をみっちりすることこそが学術集会の意義だと考えられているようで、参加者はどんな立場の人でも何か発言しようという空気が流れているんですよね。
なので、「教育講演」であってもただ聴くだけでなく、そこで疑問をぶつけたり議論を戦わせたりすることで、本物の「学び」につながる。
こうしたフォーマットの学術集会が、日本でももっともっと増えることを期待したいと思います。
最後に、一番印象に残ったコメントが、とある先生の「いやあ、僕が今までいかに”ウブ”だったか、よーくわかりました」でした。世の中の色んな事象の背後に「オトナの事情」が絡んでいることを一人でもわかって頂いただけでも、お話しした甲斐があったというものです(笑)