HPV検査が子宮頸がん検診の「肝」になる

子宮頸がんは、検診を受けることで罹患リスクや死亡リスクが下がることが証明されているがんです。下記のグラフ(「がん情報サービス」資料より抜粋)を見れば、一目瞭然ですね。子宮頸がんワクチンが普及することでもがんの発症を抑える効果はあると考えられますが、ワクチンを打っていたとしても検診の重要性は変わりません。

 

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さて、その子宮がん検診では、パップ検査という手法が使われています。具体的には、子宮頸部の細胞を擦り採って、細胞診検体(パップスメア)を作製し、顕微鏡検査を行います。ただ、子宮頚部の細胞を「擦り取る」という作業が必要になるため、女性にとって心理的な抵抗はあるかもしれません。

 

このパップ検査よりもHPV検査という手法の方が更に重要だということが、先週出たLancetへの投稿で明らかになりました。以下、mepageTODAYに出ていた記事「HPV Testing Tops Pap for Cancer Prevention(HPV検査の方がパップ検査よりがん予防に優れる)」の筆者訳です。

 

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ヒトパピローマウィルス(HPV)検査が細胞診と比べ、有意に浸潤性子宮頸がんの発症率を下げることが、4本の無作為抽出化試験のレビューを通じて結論付けられた。

5年間のフォローアップ期間後、HPV検査に割り付けられた群では対10万人で8.7人の子宮頸がん発症に対し、パップ検査群は36.0人だった。

サブグループ解析も、HPV検査群が一貫して発症率が低い、とトリノのがん疫学・予防センターのRonco博士はLancetへの投稿で共著者と共に述べている。

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この結果は、米国の現在の標準検査手法を支持するものだと、メリランド大学のTemkin博士は述べている。5年ごとの子宮細胞診+HPV検査が、各学会から推奨されている。

HPV感染がほとんどの子宮頸がんの原因だ。早期発見であればほとんどのケースで完治するわけで、前がん病変の発見が悪性腫瘍への進行を食い止めることにつながる。

歴史的には前がん病変の発見は子宮細胞診に頼っていたのが、口腔検査の出現により、前がん病変が起きる以前であっても、HPV感染を確認することができるようになったのだ。

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こららの試験では、スウェーデン、オランダ、イギリス、イタリアで合わせて176,464人の20-64歳の女性が、パップ検査群かHPV検査群に振り分けられている。イタリアの試験では、パップ検査群・HPV検査群・HPV+パップ検査群の3群に分けられ、その他では、HPV+パップ検査群とパップ検査群の2群に分けられた。

イタリアの試験では、HPV陽性と判定された場合に膣鏡検査に回され、他の3試験ではパップ検査に基づいて膣鏡検査(精密検査)が行われた。パップ検査が陰性だがHPV検査が陽性だった女性は、HPVの再検査が行われ、陽性が継続する場合は膣鏡検査に回された。

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この多試験解析の主要エンドポイントは浸潤性子宮頸がんであって、CIN、非上皮性子宮頸がん、他の部位のがんは考慮しなかった。

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ということで、4本の無作為抽出化試験をレビューしての結果の話なので、HPV検査の方がパップ検査より子宮頸がんの発症リスクを下げるという話については、議論の余地は無さそうです。一方で、日本の現状の検査は、統計は手元にありませんが、HPV検査は必ずしもセットされているというわけではなさそうです。

HPV検査自体は患者として追加的な負担を強いられるものではないですので、「受けておくべき検査」と言えるでしょう。

 

実は、子宮頸がん情報サイトの「allwomen.jp」に、下記のような記述があります。

 

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その他に、細胞診と一緒にHPV検査を行うことがあります。HPV検査は、子宮頸部の細胞に発がん性HPVが感染していないかどうか調べる検査で、細胞診でも異常がなく、HPV検査でも発がん性HPVが検出されなければ、2~3年以内に子宮頸がんになる可能性は低いと考えられています。ただし、発がん性HPVが検出されても多くの場合は自然に排除される一方で、20~30代の女性では検出される可能性が高く、心理的な負担になる可能性があります。そのため、この年代の女性は1年に1回の細胞診を受けることの方が重要だと考えられています。

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「HPVが検出される可能性が高く、心理的な負担になる可能性がある」というのは確かにその通りなのですが、これだけのエビデンスが揃ったことで、HPV検査との組合せが主流になっていくことでしょう。

現在、米国NCIのガイドラインでは、「21歳から3年に1度のパップ検査、30歳からは3年に1度のパップ検査の継続もしくは5年に1度のパップ検査+HPV検査」が推奨されていますが、ここが今後どう変わっていくか要注目です。