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理解に苦しむ医療過誤での提訴~山口県の事例~

お盆に、「ちょっとさすがに勘弁してほしいな、こういうのは」というニュースを目にした。

毎日新聞の↓の記事のことだ。

 

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医療過誤:「モルヒネ投与で死亡」 70代遺族が損賠提訴--地裁周南支部 /山口

 

 周南市の総合病院社会保険徳山中央病院(林田重昭院長)で一昨年11月、柳井市の男性(当時79歳)が亡くなったのは、モルヒネ投与が不適切だったためとして、70代の遺族女性が、病院を設置・運営する社団法人全国社会保険協会連合会(東京都)などを相手取り、慰謝料など約1650万円の損害賠償を求める訴えを山口地裁周南支部に起こしていたことが13日、分かった。

 提訴は6月29日付。訴状によると、男性は白血病の治療で入院していた10年11月16日、呼吸苦を緩和するため塩酸モルヒネを投与されたが、約10分後に脈拍が低下し、副作用により死亡。高齢の男性は、呼吸不全など副作用を起こす要因が多数あったのに、その可能性を考慮せず漫然とモルヒネを投与したなどとしている。

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記事から現場で本当に何が起こったかを完全に把握することはできないものの、呼吸苦を緩和するためのモルヒネ投与は、緩和医療の現場ではそう珍しくもない治療だ。「副作用の可能性を考慮せず漫然とモルヒネを投与」と決めつけられているが、そもそも、79歳で呼吸苦が出るくらいの末期の状態のがん患者さんであれば、「いつ何があっても不思議はない」。また、結果として副作用で亡くなられたにしても、モルヒネ投与しなければ呼吸苦がやはり患者さんの生命を縮めていたであろう。

今回のレベルの話で担当医師が都度医療過誤で訴えられていたら、ほとんどの緩和医療が適切にできなくなってしまうし、この記事のタイトルのように、悪戯にモルヒネと死を結びつけるかのような表現があると、オピオイド(医療用麻薬)への誤解がまた変な形で広まってしまう。訴訟も記事もいずれも、その社会的な影響を考えると「ちょっと勘弁してほしい」との思いを禁じ得ない。

 

想像するに、医師と患者さんの家族との間でのコミュニケーションがうまくいかず、治療の内容や見込みが十分に伝わっていなかったということはあるのだろう。ひょっとしたら、ターミナル期(末期)であるということ自体が伝わっていなかった可能性も考えられる。とはいえ、「推測」を重ねても仕方がない。ともかくも裁判上で「真の良識」が発揮されることを望みたい。