電力会社社員の発言禁止に見る「失敗の本質」
将来的な原発の比率をどうするかというエネルギー政策の意見聴取会において、電力会社の社員が発言したことが問題とされ、今後の聴取会では電力会社社員は締め出されることになった。
以下、7月19日付のFNNの記事(http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00227655.html)である。
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政府のエネルギー政策の意見聴取会で、電力会社の社員が発言者に選ばれていた問題で、17日午後、新たな方針が示された。
怒号が飛び交い、騒然とする会場。
藤村官房長官は「電力会社の方が、組織を代表して意見を述べることは、これは遺憾であると思います」と述べた。
将来の日本のエネルギー政策について、政府が国民の意見を聴く聴取会で、限られた発言者の中に、電力会社の社員がいたことに批判が強まっている。
宮城・仙台市で開かれた意見聴取会で、参加者からは「皆さんの意見を聞くって言ったんじゃないのか」との声が上がった。
細野原発事故担当相は「原発に反対している方がいるのもわかります」と話したが、参加者からは「みんな反対だよ、そんなの。当たり前だろうが、そんなの!」と怒号が飛んだ。
この意見聴取会では、東北電力の社員が発言者として選ばれたことが明らかになり、会場は、一時騒然となった。
16日、愛知・名古屋市で行われた意見聴取会でも、抽選で選ばれた発言者の中に、中部電力の社員が含まれていた。
中部電力の社員は「このままでは、日本は衰退の一途をたどると思います。国民の皆様の冷静なご判断を望みたいと思います」と述べた。
この意見聴取会での発言希望者は、原発依存度0%の支持者が106人、15%が18人、20~25%が37人。
しかし、発言の機会が与えられたのは、この人数の比率に関係なく、それぞれ3人ずつのあわせて9人。
こうした事態を受け、古川国家戦略担当相は、17日夕方、「総理からのご指示は、意見聴取会に対する、いささかの疑念も生じさせてはいけないので、電力会社の社員の意見聴取会における意見表明については、ご遠慮いただくこととさせていただきたいということでございます」と述べた。
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いやしかし、何でこんな騒ぎになっているのだろうか。発言した人が電力会社社員であることの何が問題なのだろうか。
むしろ、国民としては電力会社の意見はぜひとも聞くべきだと思う。もちろん、バイアスはかかるだろう。だけど、純粋な科学の世界を除けば、世の中で発信されている情報ではバイアスがかかっていないものの方が珍しい。大切なのはバイアスがかかっていることをきちんとわきまえた上で良し悪しを判断することなのであって、発言そのものを封じ込めることではない。
(件の発言者が、「電力会社の社員」という身分を明かさずして発言を行なったのであれば、大問題である。でも、今回のケースは身元はきちんと明らかにした上で発言している。)
原発に反対する人であれば、なおのこと推進/維持派の意見にきちんと耳を傾けた上で、判断すべきだと思う。バイアスがかかっていない情報がまずないのと同様に、フリーランチ(ただ飯)もまずないのだ。原発0%のために、どのようなコストが想定されるのかということをしっかりわきまえた上での判断でないと、「こんなはずではなかった」ということが後で必ず起こる。
0%の支持者が圧倒的に多いのに、意見陳述が3人ずつと「いびつな構成になっている」という批判もあるが、これもまた的外れな批判だ。3択なのだから少数意見であっても、平等にそれぞれの意見を聴くべきだろう。選挙だって、大政党の候補者でも泡沫候補でも同等の時間の政見放送ができる。支持率の高い候補者だけが長い時間演説できたりしたら、とんでもないことだ。「機会の平等」は民主主義の手続きとして当然のことだと思う。
一部の原発反対派の人たちが今回やっている、「自分にとって都合の悪い真実や意見を闇に押し込めて”無かったこと”にしようとする行為」こそが、最悪な行為(=失敗の本質)
であることを私たちは福島の原発事故から学んだはずではなかったのか。