スカイマークに見る「戦略的炎上マーケティング」

 23週間ほど前に、スカイマークのサービスコンセプトが話題になっていた。

 

僕は、今回の騒動はスカイマークが“狙った”炎上マーケティングではないかと思っている。それくらい、うまくいったと思う。

 

ちなみに、先週利用した際に機内の座席前に置いてあったものを撮った写真が、これ。

 

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こういうことを堂々と宣言することの妥当性について賛否両論で、僕のTwitterFacebookTLが賑やかになっていたので、それだけで成功と言えるだろう。というのも、後で理由を述べるが既存客であれを見て「乗るのや~めた」という人はまずいないと思われるので、リスクは極めて限定的。一方、あれだけ話題になれば広告宣伝価値は計り知れない。しかも、伝えたいメッセージが伝わっているのだから。

 

ちなみに上の写真、お気づきかもしれないが、オリジナルのサービスコンセプト文面で唯一「さすがにいかがなものか」と思われた、「不満があるお客様の相談先」は「消費者生活相談センター」から「スカイマークお客様相談センター」に修正されている(笑)

 

 

<確かに、安い>

 

彼らの戦略が巧みなのは、この炎上マーケティングが良い意味での「Expectation Management(期待値マネジメント)」になっているところだ。「安かろう、悪かろう」くらいの気持ちで乗ってみたら、「安いけど、意外に悪くない」という捉え方をする人が増えることを狙っている。

 

スカイマークの運賃は、確かに安い。

たとえば、羽田空港と新千歳空港の片道移動で言うと、ANAJALが大体2万円台後半なのに対し、SKY1万円台後半、とほぼ1万円の差がある。往復で考えれば2万円の差だからかなり大きい。

 

僕自身もサラリーマン時代(カイシャのオカネ)であれば、マイレージがあるからANAJALに乗るだろうが、これだけ価格差があれば、経営者として自分が乗るにはこちらを軸に考えざるをえない。

 

 

“安かろう悪かろう”ではなく“安くても案外良い”>

 

では、スカイマークANAJALと比べて何が違うか。

 

一つは、機体が小さくて古い。おそらく初期投資と燃費の節約、そして空席率のコントロールが目的で中型機にしているのだと思うが、座席数は31×6で、真ん中通路1本のみ。完全に満席なのでちょっと窮屈な感じはする。だが、高々1時間くらいのフライトであれば、機体が多少小さかろうが古かろうが、何の問題もない。最低限、PCが広げられるくらいの余裕はあるし、前の座席の下に自分のキャリーバッグを入れるスペースはきっちりある。

 

それから、飲み物の機内無料サービスは無い。でも、国内移動の時間であれば飲み物もまず必要ないし、有料といっても100円だから、払ってもまったく腹の立たないレベルだ。

 

そして、CA。上記の文面だけ見ると、とんでもないメイクやネイルをしたおネエちゃんが出てくるようなイメージを持つ人もいるかもしれないが、違和感を持つようないでたちをしたCAは一人も見かけない。むしろ、ポロシャツ姿で言葉づかいも丁寧に対応してくれると親しみがわくし、清潔感もある。すごい美人で隙のない感じの女子より、普通の感じだけど明るくて親しみのわくタイプの女子の方が、もてたりするのと同じ理屈で、なんだか好感度が高いのだ。

 

さらに言えば、イケメン長身の男子クルーもサービスしていたりして、特に女性客にとってはむしろこちらの方が気持ち良いのではないかと思えるくらいだ。

 

要は、スカイマークのサービスは「安かろう悪かろうかもと思っていたら、案外良いよね」というミニ・サプライズを生むレベルなのだ。なので、あのサービスコンセプトの話を知りつつ利用してみた人は、おそらくこう思うのだろう。「意外にサービスもまともだよね。これで1万円浮くのであれば、絶対に次もこちらだな」と。

 

ということで、スカイマークは、MVSMinimum Viable Service)、つまり絶対に外してはならない最低限のサービスは何か、を徹底的に考え抜いている、極めて戦略的な企業なのだと感じている。ということは、あのサービス・コンセプトは極めて戦略的な炎上マーケティング・ツールなのでは。。。と妄想してしまうのである。