製薬業界のソーシャルメディア・プロモーションのあり方〜英国PMCPAの12の指針〜(2)

今日は、前々回エントリー「製薬業界のソーシャルメディア・プロモーションのあり方〜英国PMCPAの12の指針〜」の後半戦。


7. 製薬会社はウィキペディアの掲載内容を修正することはできるか?

この問題はかなり難しく、会社の姿勢次第と言える。製品情報概要や患者向け医薬品ガイドなどの薬事情報について会社のサイトや電子医薬品全集と単純に相互リンクさせたり、というのは十分考えられるだろう。
掲載内容の修正はより難しい問題だ。というのも、競合製品の記述まで含めてすべての内容を責任もって正しいと言える立場に立たねばならないからだ(でないと、何故一部だけ修正して他はしないのか、という話になる)。ウィキペディアの大半のユーザーは、内容が”権威のお墨付き”でないことをわかって使っているが、一旦製薬会社がそうした内容へのお墨付きを部分的にでも出し始めると、全部やらないわけにはいかなくなってくる。


8. 他のウェブサイトにリンクできるか?

製薬会社のウェブサイトからリンクされるサイトはすべからく、精査されていなければならない。なぜ他のもっと人気のあるサイトではなく、この患者会のサイトなのか?そのサイトが自社の製品についてよりポジティブだからなのか?製薬会社はリンク先の選択について自信を持ってこうだからと言えなければならないし、リンクされたサイトが医療用医薬品を一般に宣伝してはいないことも確実にしなければならない。またリンクする際には(ウェブサイトの一部分ではなく)ホームページへのリンクが妥当だろう。


9. 検索エンジン対策をすることについてはどう考えるか?

検索エンジン対策とは、例えば自社の制作サイトがグーグル検索の上位10番目以内に入るようにするような事を言う(メタデータの利用も含める)。
自社名や自社の製品名が検索された時に上位にランキングされるようにするというのは無理からぬ話だろう。
より一般的な言葉で検索がかけられた時に、自社製品のウェブサイトが上位に表示されるようにするというのは問題がある。そのサイトが、一般向けに医療用医薬品を宣伝しているとか、一般人の会員に対し特定の医療用医薬品を処方してもらうよう医師に依頼する事を勧めているとかといった苦情が寄せられているようだったら、検索エンジン対策の行為が問題となるかもしれない。
メタデータとは、検索エンジンが検索語とウェブサイトの適合性をランク付けし、ユーザーが最適なウェブサイトを選ぶ事が出来るようにその結果を表示するために使われるウェブページ情報である。メタデータは自社サイトの内容を反映はするが宣伝的であってはならない。特定の医薬品の情報を疾患啓発サイトにリンクさせるためにメタデータを使う事は認め難い。


10. ブログを使う事はどうか?

製薬会社自身がブログを書くという事であれば、内容はプロモーション・コードに準じたものでなければならない。
もし製薬会社が治療薬や治療領域について書いているブログに資金提供する場合、そのブログのすべての情報がプロモーション・コードに準じており、資金提供元も明らかにしているということを、慎重に間違いなくする必要がある。
例えば、ブログに対して資金提供している会社の製品の適応外の用法について、誰かが書いているというような事態はあってはならない。
ブログの性質として、書き手が自由に自発的に個人的見解を表明するためのものであることを考えると、書き手にプロモーション・コードを遵守させることは不可能なので、薬そのものやその使い方について論じることを目的とした(もしくは論じるであろう)ブログサイトに資金提供してはならない。


11. 自社の従業員が会社に関係ないサイトで掲示板に投稿するのはどうか?

製薬会社の社員のみならず、取引先業者の社員のいかなる行動も、プロモーション・コードで規定される。従って、個人のウェブ上の行動も、プロモーション・コードに準じなければならない。
製薬会社は自社社員のウェブ上の行動について明確なポリシーを持たなければならない。情報の透明性と公開がプロモーション・コードの精神でもある。


12. 製薬会社がウェブ会議を開催したりサポートしたりすることはできるか?

可能だ。ただし、研修が主要目的でなければならないとするコードの第19条に沿ったものでなければならない。必要経費の徴収についてはこの限りではない。会議参加への派遣費用の肩代わりはもちろん不可だし、資金提供も明らかにされてなければならない。会議の成果物の出版については、未承認薬や用法・用量の宣伝をしてはならないという事も含め、プロモーション・コードに準じたものにしなくてならない。もし会議のディスカッション内容を公表するとしたら、宣伝と見なされる。



とようやく12個全てそろった。


製薬会社として特に気を配らなければならないのは、10番目と11番目だろう。マーケティングが業者を使ってある疾患についてのブログの書き手を募ったり、社員が匿名でmixiに自社の薬について何らかの見解を述べたり、というような事はやっていても不思議は無い。(現に、私もそれに類する事を見聞きしたことはある)


しかし、その実態が露わになった時のリスクを考えたら、こうしたコソコソしたやり方は決してやるべきではないし、コンプライアンス違反に当たるので認めないという強い態度を予め社員に示しておく必要があろう。


やはり、「スケベ心」出すべからず、だ。