学術大会を東北でやろう~長期的な支援の考え方~

震災の影響を受け、循環器学会や外科学会など、大型の学術大会の中止が目立つようになってきた。あまりにも直近に予定されているとか、会場が被災地なのでやむを得ないという学会もあろうが、そうでない学会、特に地方都市で開催する学術大会については是非実施して頂きたいと考えている。


なぜなら、学術大会の「経済効果」は特に地方都市にとってはバカにならない規模だからだ。


中規模(3000人程度)の大会だとしても、宿泊費・お土産代・飲食費その他遊興費などの個人支出、そして会場費・弁当費なども含めて考えれば1人当りざっくり5-6万円くらいのお金は地元周辺に落ちる。となると、それだけで2億円近く。これだけの経済効果が出せるイベントは、数十万人程度の地方都市経済にとっては間違いなく大きなプラスになる。


実際、震災の1週間前に青森県三沢市で開催された胃癌学会に参加したのだが、その時に乗り込んだタクシーの運転手さんがポツリと呟いた言葉が耳を離れない。「いやぁ、こんなにお客さんが沢山いるなんて、三沢が始まって以来ですよ。」と。


三沢はもう何年も前から、中心の商店街は完全に「シャッター商店街」になっている。そんな中で市内の宿泊施設が満杯になるような学会が行なわれる事の恩恵は東京の人が想像するよりはるかに大きいものだ。あの大会が震災前で、三沢や八戸などの地元の方々ためにも本当に良かったと思う。


そこで提案なのだが、今後数年間、学術総会を東北で意識的に行なうようにしてはどうだろうか。


現在は、被災者に対する直接的な物資・金銭の支援が中心だが、今後被災地への支援は長期的な視点で見る必要がある。それには何といっても地域経済を復興させるという視点が必要だ。


郡山、福島、仙台、盛岡、八戸/三沢、青森などが開催の候補都市になってくるだろう。


もちろん、地方都市で行うと会場が複数に分かれるとか、ただでさえ復興で忙しい地元大学の医局や病院に準備の負担をかけられないとか、すでに別の開催場所が決まってしまっているから変えるのは難しいとか、ハードルは色々あるだろう。


それでも、復興に役立つのであれば、そんなハードルは小さな話ではないだろうか。何も地元の先生が頑張らなくても、土地勘が必要ならその地方の出身者や医局の卒業生が助けるようにしたら良い。そして大会当日は、学術面での研鑽を積むのは勿論として、皆で地元のお酒や食材を頂き、地元の先生方を初め、支援に注力された先生方を慰労させて頂く場にしたら良いではないか。


皆で東北を盛り上げる、という気運が医療界の学会からも出てくるよう、私も働きかけていきたい。