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日本にもこんな会社があったのか!~アリジェン製薬の唯一無二の研究戦略~

事業経営

このブログの読者は医療関係者が多いと思うが、アリジェン製薬と聞いて、ピンと来られる方はどれくらいいるだろうか?恥ずかしながら、私は先週まではまったく知らなかった


アリジェン製薬は、いわゆる「創薬」を専業とするバイオベンチャーだ。
この会社、「日本にも200あまりのバイオベンチャーが存在するが、開発段階までに進んだ(即ち、ベンチャーにとってみたら「導出」が成功した)成分はたったの12個。そのうちの7つはアリジェンが手掛けている」(所社長)という、凄い会社なのだ。


ただし、まだどの製品も承認・上市には至っていないため、一般には殆ど知られていない。
私も、先週の所社長の講演を聞いて初めて知ったと同時に、その遠大な取り組みに畏敬の念を覚えた。




<唯一無二の研究戦略>


アリジェン製薬のすごいところはいくつもあるのだが、何と言ってもその研究戦略がすごい。戦略の根幹は3つだ。


1つは「感染症特化型」であること。


感染症はある意味「終わった」領域と思われていて製薬大手は手を引いてしまっているのだが、実際は耐性菌が出てきて「終わり」とは言えない状況にあるし、市場規模も大きい。また、動物で効果が出ると、(ターゲットが細菌やウィルスなので)ヒトでも効果はまず出るし、何と言っても、効果の見極めが短期間でできる。

ということで、目の付けどころがまず素晴らしい。しかし、これだけだといわゆる「筋の良い領域特化」という意味では真似できなくはない戦略だ。


2番目の戦略の根幹が「スーパースター研究者集中投下」。これが唯一無二の戦略で感動すら覚えた。


日本はいわゆるメガファーマは存在しないものの、実は創薬研究では非常に優秀で、今までに日本発の薬でブロックバスター(年間売上1000億円以上)が14個生まれている。その発見者の内、11人が現在も生きているが、この内、出世できた人は2人だけ。あとは不遇をかこっている人が多い。このエネルギーのマグマが溜まっているスーパースター研究者8名をスカウトして、人とお金とインセンティブを付けて研究の指揮を取らせる

この戦略が「唯一無二」なのは、研究開発の分業化が進んでしまった現代では、「ブロックバスターを輩出したのはこの人」と言えるような研究者はもはや出てこないからである。「もう同じ事しようと思っても誰もできないでしょうね。」と話されていた。


これら2つの根幹戦略とその他のありとあらゆる工夫があいまって、コンマ数%と言われる創薬部分での成功確率を「3分の1」にまで高めることに成功しているのだ。驚異という他は無い。


最後に、所さんのお話の面白さは尋常でなかったのだが、モデレーターの楠教授が、「所さんは自分が面白がって話すから面白いんですよね」とコメントされていた。全くその通りだと思う。伺うと超おぼっちゃまから無一文のプー太郎まで、ものすごく振れ幅のある人生をおくられているのだが、おそらくどんな状況でも人生を自分で面白くされているのだろうなと感じる。生き方の達人なのだろう。


日本の製薬業界に、こんなにも面白いベンチャーがあったことを知った、貴重な夜であった。