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患者調査をテコに意味のあるがん対策推進を~愛媛がんフォーラム講演より~

医療の変革

先週土曜日に松山で開催された「愛媛がんフォーラム」で、昨年アドバイザーの立場として関与した「がん患者満足度調査」の要点について報告講演し、パネルディスカッションにも参加してきた。




<愛媛のがん患者満足度調査は画期的!>


愛媛のがん患者調査(というより、実態としては経験調査に近い)は、4つの点で画期的だ。


第一に対象が今現在治療の只中にいる入院患者さんであること。通常の調査だと、郵送やWebでスクリーニング込みでやるか、患者会に依頼して会員対象に行なうか、もしくはその組合せになる。そうなると、現在はそれなりに元気な状態の患者さんが対象になってくる。また、患者会に参加されている方は、医療に対する問題意識が非常に高く、「ふつうの患者さん」の意識や経験とは異なる可能性が高い。


第二に多くのがん種の患者さんを満遍なく対象にしていること。前述したように通常の調査だとそれなりに元気な状態な患者さんが回答するため、がん種で言うと乳がんや血液系のがんなど、が多数を占めることになる。今回の調査ではこの偏りがなるべくなくなるような配慮がされている。


上記二点は、全国規模の調査として報道でも取り上げられていた、日本医療政策機構の「患者が求めるがん対策 〜1600人のがん患者意識調査〜」(リンク:http://ganseisaku.net/impact/reports/gan_ishiki_2009/index.html/gan_ishiki_Web_20100714.pdf 以下、HPIJ調査)の回答者属性と比較するとよくわかる。HPIJ調査では84%が患者会もしくは家族会の所属者で、がん種は、乳がん:31%、血液/リンパ:21%、が過半を占める。一方、愛媛の調査では対象の512名の内、患者会もしくは家族会の所属者は殆どいないと考えられ、がん種も、乳がんや血液/リンパにそん色なく、肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん等がサンプルとして取れている。


第三の画期的な点は、県下の7つのがん診療連携拠点病院をすべてカバーしていること。これにより、施設毎の特徴が浮かび上がり、施設もしくは地域固有の問題なのか、県全体の問題なのかが見えてくる。(ただし、今回の報告の中では施設の固有名詞は伏せてある)


最後にこれが一番大事なのだが、調査が患者会主導のもとに、「行政(愛媛県)」、「医療機関(愛媛県下のがん診療連携拠点病院)」、「患者(おれんじの会)」の3つの立場が協力して行なわれたものであること。やはり、自分たちの手でこうした取り組みを行なわないと、地域で本当に問題解決をしていくことに繋がらない。


調査の全容は近く県のHPにアップされると聞いているが、当日のプレゼンスライドはこちら(↓)をご参照いただきたい。



<「がん対策推進」を患者目線で言い換えると>


今回の発表で一番頭を使ったのが、一般の患者目線で見た時に「がん対策推進計画」が目指すべきものをいかに表現するか、であった。そこで出てきたのが、スライドの冒頭部分にある「こころ」と「からだ」と「オカネ」の落ち込みをいかに支えるかという構図だ。


国や県のがん対策協議会がらみの資料で気になるのが、どうも言葉遣いが患者目線ではないという点だ。「療養生活の質の維持向上」とか、「身体的もしくは精神的な苦痛の軽減」といった言葉も、具体的に何が質の維持向上や苦痛の軽減に結びつくのか、言い換えれば「現在患者さんは何に困っているのか」が出発点になっていないと抽象論で終わってしまう。


また、がん医療の均てん化とか緩和ケアの普及とか在宅医療の推進、といった打ち手を表現する言葉も、医療提供者や政策立案者サイドの中だけで語られているのには構わないが、一般の患者さんにとってはわかりにくい。「均てん化」が意味する事は具体的に何なのか、緩和ケアはどのような状態になれば普及したと言えるのか、在宅医療の推進って本当に患者が望んでいる事なのか。


今回の愛媛の調査はこうした視点を盛り込み、具体的な問題や打ち手をあぶり出すものとなっている。患者会・行政・医療機関が一体となったこの取り組みが、他の地域でも広がり、意味のあるがん対策推進を促していく事を大いに期待したい。