がん患者にとって必要なのは、"腫瘍主治医"

がん医療にまつわる問題を見ていて、どうにも”腹落ち”しない議論がある。地域連携とか病院内での連携のシステムだ。”連携”という言葉ほど耳障りは良いのだけれども、対応してくれる人がころころかわるばかりで、患者さんにとっての安心感が脇に置かれてしまっているのではないか。


外科の先生に切ってもらったと思ったら、今度は化学療法で内科の先生が出てくる。と思ったら、今度は放射線。そして、これ以上積極的な治療の術が無くる段でもうここでは何もできないからと、緩和ケア病棟やホスピス専門の施設を紹介されたり、在宅で緩和医療ができる医師を紹介される。この一連の動きの中で、


「がん治療の主治医は誰か?」の2回にわたるエントリー(http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100623/1277301646http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100627/1277653635)で、私は開業医こそ主治医役を担うべき存在と主張した。本当に開業医にそこまで担わせられるかどうかはともかく、患者側からしたら”主治医=自分のがん治療にとっての「顔」となる医師”が誰かしらいる方がよい。


例えば、医療機関側から見た時、製薬会社のMRが入れ替わり立ち替わり来るとなると、「誰が会社のカオなんだい。」となるだろう。誰しもお客の立場になってみると、何人もの営業マンといちいち信頼関係を築くより、しっかりと対応してくれる1人の”アカウント営業”とやっていきたいものだ。ましてや、患者にとっては尚更、きちんと自分の事をずっと見て(診て)くれる人が欲しいというのが本音だろう。


がん治療は何年にもわたって色んな形での治療が施される。この間の”経緯”をきちんとわかってもらえているという安心感というものは大きい。昨年、愛媛県で行なったがん患者さんの調査では、積極的治療をやり尽くした後の過ごし方として、自宅で過ごすと同じくらい、それまでの病院で過ごしたいというニーズがあった。理由として挙げられていたのが、「主治医のいる安心感」である。


今までは形上、外科医(手術した人)が主治医となるケースが多いのだが、残念ながら多くの外科医は忙し過ぎる。手術や緩和医療にも精通している(知識としてわかっている)内科医、抗がん剤や緩和医療にも精通している外科医や放射線科医、といったところをうまく”腫瘍主治医”として仕立てて、日常診療や治療の節目での基本ムンテラ(説明)はすべてこの”腫瘍主治医”が担う、という形にできなものだろうか。