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「”年金不安”ではなく”所得不安”である」〜竹中平蔵氏のランチョンセミナー講演より〜

柔和な表情と対照的な切れ味鋭い語り口。小泉政権の屋台骨を支えた竹中平蔵氏は、テレビでたまに見ることはあっても実物は見た事が無かった。その竹中さんの講演(ランチョンセミナー)を聴く機会が昨日あったが、期待に違わぬ内容だった。


竹中さんの主張は大きく以下の4つである。


1) “年金不安”ではなく”所得不安”
2) デフレ克服こそ政策の一丁目一番地
3) 「失われた20年」ではない
4) リーダーシップの欠如以上にフォロワーシップも欠如




<”年金不安”ではなく”所得不安”>


この話に入る前に、「日本に年金不安があると思う人手を挙げて下さい」ということで会場に質問があった。殆ど全員が手を挙げたのに対し、竹中さんは、「元々年金の額は小さい。皆さんが不安なのは老後の生活であって、年金そのものが支払われないということではないのでは」と。


確かに”現役”がまだ20年以上残されている世代にあるのは、”年金不安”というより支払った額ほど支給されないという”年金不満”だし、年金だけで満足な生活できるか心もとないが十分な資産形成をするだけの所得がない、という不安が本質的な問題だ。


従って、(所得を増やすための)経済成長にフォーカスを当てるべし、という主張は確かに納得できる。




<「デフレ克服」こそ政策の一丁目一番地>


「モノの値段が下がったら給料が下がる。金利が上がると思えなければ、設備投資もローンもできない。デフレは過去の債務の実質価値を上げてしまうわけで、デフレ克服なしではTPPやろうが消費税上げようが、効果は出ない。」というのが竹中さんの説。


この克服のために、日銀による十分なマネー供給の確保と需給ギャップの解消を目指す大型補正予算の実施を唱えられていた。


私自身はこの言説はストレートには頷けない。


デフレとかインフレは、あくまでも「現象」に過ぎないということだ。デフレが問題なのではなく、「成長の源泉が見つけられない事」が真の問題なのだ。これなしに、デフレの克服だけを目的にやみくもに需要喚起を図る補正予算を入れても一時凌ぎにしかならないし、マネーを市場に注入したところで行き場が無いので国債を買うくらいしか手が無い(現に今そうなっている)。単にインフレになったからといって、借金を増やして投資や消費に回す企業や個人がどれくらいいるだろうか。


中長期的に生産年齢人口が減少し続ける日本にとって、「需給ギャップの解消」のためには、供給を減らすか、グローバル競争力を維持して世界の需要を取り込み続けていくより手は無い。縮減より成長を選択するとしたらその源泉は”外”にあるのだ。そう考えれば、輸出競争力を高め観光収入を増やす”円安への誘導”と”外貨獲得産業の優遇・育成”こそが、本質的な打ち手であろう。




<”失われた20年”ではない>


過去20年間を評するならば、「失われた12年⇒下げ止まった5年⇒最も失われた3年」となる。2003年から2007年にかけて、株価は80%上昇、雇用は100万人増、財政赤字は22兆円分改善した。「失われた20年」と思考停止するのではなく、事実ベースでものを見るべき、というのが竹中さんの主張。


これは、まったくその通りと思う。




<リーダーシップと同時にフォロワーシップも必要>


内閣が変わるまでの期間を見てみると、麻生内閣が1年弱、鳩山内閣が9カ月、菅内閣はたった4カ月。どんどん短くなってしまっているが、マスメディアも国民もみな責任を感じなければいけない、と。確かに、瑣末な「悪者探し」話ばかりにフォーカスがあたっている現状は異常だ。


この点は、将来的には変わっていくと期待している。既存のマスメディア主導の世論形成ではなく、現在花開きかけているネット上のミニメディア主導の世論形成が、真の意味でのフォロワーシップを構築する可能性を秘めていると感じているので。現政権中では起きないだろうけど。。。




<最後に:国債の余命は3年>


質疑の中で、「国債暴落に伴うハイパーインフレ」の可能性についても言及されていた。曰く、「民間純資産1100兆円と政府の債務900兆円のバランスはこのままでいくと3年後に逆転する。そうなったら国債市場で何が起きても不思議ではない。まずはプライマリーバランス(単年の収支を赤字にしない)が必要だが、そのためには増税より歳出を抑えて成長する道をさぐるべき」と。


竹中さんのご指摘はいずれもごもっともだし、御本人が政権内にいれば反転の期待はもてるのだが、いかんせん現政権からはまったく離れたところにいる。結局のところ、ハイパーインフレと円安の波を一度かぶることになるのがメインシナリオとして変わらず、というのが今回の講演を伺っての結論だ。