*[医療への視点]尿道狭窄のエキスパートはどこにいる?

尿道狭窄という病気をご存じだろうか。


外傷や尿路感染などが原因で尿道が狭くなってしまい、おしっこが出せなくなる病気だ。たいがいの泌尿器科ではこの病気の治療法は、バルーンを入れて尿道を拡張する、もしくは内視鏡で狭窄部を切開する、といったことをずっと繰り返し続けるというものであり、患者さんにとっては長年の苦痛から逃れられない。


実は、先週末一緒に飲みに行った、高校の同級生の泌尿器科医(某大学医局所属)がこの尿道狭窄を根治させる「尿路再建手術」のエキスパートということを知った。そんなにメジャーな疾患ではないのと、手間がかかるのとでこの手術に長けている医師というのは非常に数が限られているらしい。同席していたもう一人の別の大学所属の泌尿器科医が、「そう、困っているんだよね、尿道狭窄の患者さんって」と言っていたくらいだから、きっちり尿路再建できる医師は数が限られているのだろう。


エキスパートの彼曰く、「今まで色んな病気を見てきたが、この病気ほど患者さんのためになったと実感できるものはないんだ。患者さんが『これで孫と温泉に行けます』と外来で手を取って涙を流して帰られるなんていう経験ができるのは他の病気ではないからね。」ということだ。


飲んでいた時も話題になったのだが、日本の医療機関のHPでは、こうした「これこれの治療で当院のXX医師は実績が豊富」みたいな情報が決定的に欠けている。ちなみに、件の同級生が所属している大学病院の泌尿器科は独自のHPを持っておらず、「医局員がカンパでお金を出し合って、HPを作る事を考えている」といった状況なのだ。これでは、患者側からはどこへ行ったら良いのかわからないし、実は開業している医師や一般病院の医師でも、患者をどこへ送ったらベストなのかがわからない


ニッチでかつ未充足ニーズが大きいのだけど、医師ですらどこの誰がエキスパートなのか実はあまりわかっていない、という疾患は他にもたくさんありそうだ。こうした「本当は治るのだけれども、医師も患者も情報不足で治し切れていない」疾病を何とかする、という観点で何かできないかを今後考えてみたい。