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癌治療学会に参加して(1)~がん診療で必要なエビデンスの見せ方って何だろう~

癌治療学会から帰ってきた。かつてメーカーの人間として参加していた時と比べると、色んなセッションを自由に行き来し、色んな科の医師、看護師、患者、メディア、メーカー等の人たちと会話することができ、見晴らしの良さを感じる。


さて今回、今まで常識的に思っていたけど「ちょっと待てよ」と考え直したものがある。


<素直に想像されるエビデンスの形とは>


がん関連の「エビデンス」というと定番なのが、生存率を初めとした評価項目を縦軸に、時間を横軸にした階段状の折れ線グラフ(階段グラフ)である。


この階段グラフだいぶ見慣れてきてしまっていたのだが、がん関連の仕事をするようになった当初、見ていて非常に違和感を覚えていた。昨日肝がんのセッションの議論を聞いていて、久しぶりにその違和感を思い出した。


議論の内容は、「肝動注(肝がんの治療法の一種。肝動脈から抗がん剤を大量に直接肝臓に流し込む手法)は強いエビデンスは乏しいけど、手術で根治に持っていける可能性があるので捨て難い」という発言だ。


この発言は、確か根治には持ち込めないが生存期間延長のエビデンスがある分子標的薬(ソラフェニブ)との対比で出てきた発言だったと記憶している。


この発言を聞いて私の頭に浮かんだのは、添付①のようなグラフだ。

Blog-101029-evidence.ppt 直


単純化しているのは承知でご覧いただきたいのだが、ポイントはこうした確率分布の見せ方は特徴を直感的に把握できる特性がある。




<患者目線は階段グラフか分布グラフか>


このことを頭に置いた上で、添付②の2つのグラフを見て頂きたい。先ほどはconceptualなグラフだったが、今度は具体的なダミーデータを「階段グラフ」にして示したものと、確率分布的な見せ方である「度数分布グラフ」にして示したものとで並べている。


自分が患者だったら見たいのはおそらく分布グラフだろう。


自分の治療法「5年生きる確率はX%です」とか言われてもピンと来ない。ましてや、先ほど出した事例のように5年生きる確率が高いのは治療Bかもしれないが、10年以上生きる確率が少しでもあるのは治療A、みたいなことであれば、患者の治療法選択にとっては極めて重要だ。分布グラフだとそのあたりの情報を一目で把握できる。


それに、階段状に落ちていくのは、心理的に見たくない。度数分布の方が、「10年以上生きる人は2割いる!」という部分が目立ち、まだポジティブな気分になれそうな気がする。


階段グラフは2つの治療法を並べた時に比較し易いというメリットはある
が、確率分布だとて線形で示せば比較はそう難しくないだろう。確率分布の形状の一覧性という他のメリットを考えると、学術的目的だとしても分布グラフに軍配が上がりそうな気がする。


こういうものって、最初にやった人のものが「デファクトスタンダード」になって、後の人たちは何も考えずにその「お作法」に従っていくということなのだろうが、たまには原点に戻って、何でこういった見せ方をしているのかという視点に立ち戻ることが大切だと思う。


是非、医療者の皆さんからのフィードバックをお待ちしたい。