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Health2.0カンファレンス訪問記(2):Beyond ROI

医療の改革

前回はOptimismに支えられる「多産多死」の起業文化の重要性について触れた。でもHealth2.0を語るにあたり、これだけで十分かというとそうではないと思う。


Optimismに支えられる文化の根幹の一つは、IPOや企業売却などの投資家や起業家たちにとっての美味しい「出口」の存在だ。


しかし、患者のためになるツールや仕組みを生みだすのにあたって、本当にでかい投資が必要なのか?というより、でかい投資を前提としてしまって良いのか?私はそうは思わない。


米国の殆どのHealth2.0絡みの企業のビジネスモデルが、かなりの程度広告に依存している。だが、これは「普遍的」とも「永続的」とも思わない。これでもかというくらい医療用医薬品の消費者向けの広告にオカネを費やす米国だからこそ成り立っているのだ。そして、市場価格で決まる故に高止まりしている医療費・保険料があるからこそ成り立っているとも言える。


でも、これは世界的に見たら「例外」である。


もうちょっと、ミニマムな投資で儲けはそこそこ、だけど医療全体を大きく変えるインパクトを生みだす“Lean” なモデルが、特に米国以外のHealth2.0企業には必要だと思う。


Healthcareで何といっても重要なのは、「何のために誰のために我々はこの仕事をしているのか?」というミッションなのだ。投資の金額の大きさはあくまでも”手段”の問題でしかない。


実はHealth2.0の閉幕にあたり登場したのが、御主人を肺癌で亡くされたレジーナという画家の女性だった。彼女の御主人は、末期の状態でがんを発見されたのだが、「うちでは扱えないから」と病院を”たらい回し”された上に、どの施設でも情報が共有されていないため同じような質問を何度もされて、非常に厳しい体調の中で説明を一から繰り返すという、劣悪な医療体験をしている。


彼女は言った。涙ぐみながら、「この私達患者や家族の状況を何とかするために、皆立ち上っているのよね。色んな学会やカンファレンスに出席しているけれども、私たちが直面している問題を何とかしようという点で、ここにいる皆ほどの熱気が感じられるところは他にはないわ。だから私はHealth2.0が大好きなの。」と。


因みに、彼女がこの3日間で描いた画がその場で即興オークションにかけられ、参加者から3100ドルで落札されていたが、このあたりがいかにも米国らしい。でも、この「左手に論語、右手に算盤」ではないが、「左手に(患者の)情理、右手に算盤」の精神が、Healthcareの変革を進めて行く上で必要なものなのだと思う。


おそらく、カンファレンスのモデレーターである、インドゥ・スバイヤやマシュー・ホルトも上記の視点についてはよくよくわかっているのだと思う。だからこそ、最後の締めにレジーナを配したのだろう。


Optimismの熱による盛り上げを示す一方で、最後に我々のMissionは何なのかという原点を思い出させてくれたMatthewとInduの企画センスに深い敬意を表したい。