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日本の医療用医薬品が"高価"は幻想である

「日本の薬は海外と比べてあきらかに高い」、というある先生のTweetを今日見かけた。


同じような言説を他でも目にした事があるが、製薬会社での経験から言って、「日本の薬価が世界で飛びぬけて高い」との論には、非常に違和感がある。




<薬価はどのようなロジックで決まるのか>


一般に、日本の薬価の算定方法は、おおよそ下記のようなものである。


(1) 国内の類似薬(似たような薬理作用を持つ薬)を設定し、これと同等の価格をはじく。類似薬が無い場合は、原価から算定する。
(2) 画期的な有用性のある薬剤に付いてはその新規性や有用性に応じた加算を行なう
(3) 同じ薬の海外(米・英・独・仏あたり)の平均薬価とのかい離があまりにも大きな場合は調整する(とはいえ、変更幅は最大で2割程度だったと思う)


上記の方法があるべき姿か否かの議論の余地は多少あるかもしれないが、まあそんなに理不尽な決め方ではないだろう。こうした決め方をしている限り、元々の日本の薬価の水準が海外と比べて抜きんでて高いという事でもない限り、日本の薬価だけが飛びぬけて高いという事にはならなそうだ。




<実際によく使われる薬剤の薬価は先進国では”平均ちょい上”の水準>


とはいえ、具体例で見るのが一番早い。


「東京日和@元勤務医の日々」 2010年6月14日エントリー「日本の薬価は国際的に見て高いのか」の分析が非常に参考になるので、ご参照されたい。
http://blog.m3.com/TL/20100614/2


これを見てもわかるように、日本の薬価は”平均ちょい上”レベルという認識が正しい。


私が所属していたヤンセンファーマが持っていた薬も、海外薬価と比べてデュロテップはずばぬけて高いけど、リスパダールは逆にずばぬけて低い、というように、”デコボコ”な感じだった。




<”エビデンスに基く議論”を>


一部の医師の方の言説で時々違和感をおぼえるのは、治療の効果や安全性についてはエビデンスに基づく話か否かシビアに考えられている一方で、一旦医療崩壊や医療財源がらみの話になると、途端に主観的・感情的な議論になることがままある点だ。


冒頭のTweetをされていた先生は現在イギリス在住。上記のブログ分析を見れば確かにイギリスの薬価は日本よりだいぶ安いので「日本が高い」という認識を持たれたのだろうが、実態としては他の国と比べてイギリスが抜けて安いのであって、日本だけが高いわけではないという事に気づかれると思う。


大事な論点であるからこそ、”エビデンスに基く議論”が求められるのだ。