胃がんの治療ガイドラインに見る、あるべきガイドラインの"カタチ"

がんの治療ガイドライン、つぶさにご覧になった事のある方はどれくらいいらっしゃるだろうか。


最近、いくつかのがん種で日本の最新のガイドラインをざっと眺めてみたのだが、そもそも最新のガイドラインがどこにあるのかを探すだけで一苦労するのに閉口した。それぞれの関係学会とか研究会といった類のHPに記載されているのだが、それを見つけるのが一手間なのだ。


米国は、NCCNのガイドラインが有名だが、どのがん種も似たようなフォーマットできっちり作成している。一方、日本は各がん種の学会がそれぞれ独自に作成しているためか、フォーマットもバラバラで何とも見辛い。


NCCNガイドライン:http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/f_guidelines.asp


一応、がん治療学会が各がん種のガイドラインを「がん診療ガイドライン」として↓のページにまとめて、アルゴリズム等でフォーマットを統一しようとはしてはいるが、残念ながら最新のものとは限らない。

がん治療学会「がん診療ガイドライン」http://www.jsco-cpg.jp/


がんのガイドラインでもう一つ問題なのは、患者さんが読むとすると専門用語が多すぎて、とても見る気が起きない点だ。「TNM分類」とか手術の術式とか、やたらとアルファベットの省略形が出てきて、何が何だかわからない。「ガイドライン」は医療者にも必要だが、患者・家族にも必要だという観点が抜けているのではないか。


「何とか分類」なんて患者にとってみればどうでもよい話で、要は、自分の状態ではどのような治療の選択肢があって、その中で何がベストそうなのか、が知りたい事だが、そこになかなか行きつけない。


その意味で、胃がん治療ガイドラインは出色の出来と感じる。特に、「一般向け」と称しているガイドラインが非常に分かり易く、もっと評価されて良いと感じる。


 胃がんの一般向け治療ガイドライン http://www.jgca.jp/PDFfiles/GL2IPPAN.pdf


このガイドラインを見て感じる、日本のがんのガイドラインで必要な改善点は下記だ。
 ぱっと見てわかる一覧性
 がん種を問わない共通フォーマット(アルゴリズム)
 専門用語の噛み砕いた解説
 特に手術についての「図解」


2001年には患者向けのものを作成していたということで、胃がん学会の先見性に拍手を送ると同時に、他のがん種について、患者や素人の医療者にとって少しでも”使える”形に変えていけるよう、メディカル・インサイトとしても尽力していきたい。