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がん治療の「主治医」は誰か?(1)

医療の変革

先週、癌研有明病院で、国立がんセンター中央病院の前病院長である土屋了介先生の講演を拝見した。土屋先生、この春から癌研の顧問の立場になられており、この日は”お目見得”の講演会であった。


土屋先生のお話は常にエッジの効いた「持論」が聞けて面白いのだが、当日も、日本の学会はプレナリー・セッションが少なすぎる(または無い)、救急用のベッドの空き状況をTimes24方式にできないか考えるべき、など、”ならでは”のお話が続いた。中でも最も面白かったのが、「癌研お墨付き診療所」のアイディアである。


これは、例えば癌研有明病院のようなブランド力のある病院が「お墨付き」を診療所の医師に出して、この診療所の医師とカルテ他の全ての情報を共有しながら患者を協働して診ていこう、という発想だ。


特に、在宅への移行の際には、近隣の医者で本当に大丈夫なのだろうかという患者側の疑念は当然あるわけで、少なくとも「お墨付き」的なもので安心感を醸し出す事は大いに必要であろう。


更に、外来治療の期間中から上記のような協働体制が機能していれば、近隣で患者の事を良く分かっている医師がしっかりと時間を取って患者に対応することで患者の満足度も上がるだろうし、病院にとっても診療効率の向上・収益改善が見込める。


この発想をもう一歩進めて考えてみると、「主治医」の概念を変えることが視野に入る。


がん患者にとって現在の医療体制の大きな問題の一つが、通常の治療の手段が尽きた時、「主治医」と頼みにしていた病院医師から「この病院ではできることがもうない」という趣旨の事を言われ、「見放され感」を味わうことである。


この問題の根源は、患者が「主治医」を病院の先生だと感じる事にある。患者にとっては、常に頼りにできるプロフェッショナルが付いて欲しいのだが、その役割を大病院の先生が担うのはシステム上無理がある。



捌かなければいけない患者の数を考えると、外来では3分診療になるし、通常の治療ができなければ相当数の患者は入院を継続させる事ができない。そこで発想を変え、「主治医」の役割を開業医が担うような制度を提唱したい。


イメージとしては、「がん専門コンサルタント」といった"お墨付き"資格をきちんと勉強した開業医に付与し、がん治療の始まりから終わりまでずーっと患者にとっての「顔(=主治医)」になってもらう感じだ。


この「顔(=主治医)」となる医師の役割は、以下のようなものになると考える。


疑い時の一次相談⇒病院・Drの推薦、入院斡旋⇒病院での告知および治療方針説明時の同席⇒退院後の外来フォロー(病院担当医との連携)⇒ベストサポーティブケア移行時の診療体制アレンジ・看取り


この体制を実現できれば、、、


 患者や家族にとって比較的気軽に相談できる医療プロフェッショナルが身近にいることで、治療方針決定時などでのストレスが軽減される


 痛みなど患者がなかなか言い出せない症状の発見・治療がスムーズになる


 患者が怪しげな代替療法に不必要に嵌る事を防ぐ


 カギとなるタイミングで専門コンサルタントが同席することで、一部のコミュニケーション能力の低い病院医師による「ドクハラ」を防ぐ


 専門コンサルタントたちに知見が溜まっていくと、将来的に病院やがん治療医の質的評価につながる


といった感じで、「一石”五”鳥」くらいの効果が期待できる。


ではこの体制作りに何が必要条件なのか、そして実現に向けての課題が何かについて、次回述べたい。