[メディカル・インサイト]TOBYOプロジェクト~"narrow path"の出口~

メディカル・インサイトの事業の中で、日本最大の患者闘病ブログのポータルサイト「TOBYO」との連携については、以前のエントリーにも取り上げた。http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100215/1266245310


三宅さんの「TOBYO開発ブログ」にもその後の進捗が記されている(http://www.tobyo.jp/tobyoblog/2010/1755.html/trackback)が、私もプロジェクトの参画者として少々思うところを述べてみたい。


患者さん・御家族が書かれたブログを読み込んでみると、驚くほど詳細に治療に対するフィードバックが描かれている。病院や医師に関しては固有名詞はまず出てこないが、薬剤に関しては逆にほぼ間違いなく固有名詞が出てきており、ここにビジネスチャンスがあると考えている。


薬剤に対しての「患者体験」は自分が製薬会社のプロダクトマネージャーであれば、是非にも押さえておきたい情報だ。なぜなら、大抵の場合、医療用医薬品においては製品を使用してどうだったかというフィードバックは、医師やMRを経由してしか入ってこないからだ。


DFC(Direct from Consumer)のコンセプトが最も活きるのが、このブログという形態なのであろう。ただし、「ブログ」という"narrative"な形態である以上、定量化を無理にしようとしてもチープな内容になってしまう。これは、以前のエントリー「医療におけるブログリサーチ」(http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20100204/1265296896)にも書いた通りである。


一方で、膨大な定性的な情報をいちいち読み込む暇は、製薬会社のマーケッターには無い。戦略的にカギになる定性的な情報をいかに効率よく入手して仮説を構築するか、というマーケッターの眼でTOBYOを再度見た時、


  "現在着手しているDFC(Direct From Consumer)商品化もコンテンツを制作するのではなく、ユーザーにデータへのアクセスを提供するツールであるべきだ。つまりDFCはインターフェースとフィルタリングが肝であり、データの分析や解釈はユーザーに任せるべきなのだ"(上記引用のTOBYO開発ブログより)


という結論に辿り着いた。


もちろん、分析や解釈も戦略的センスが必要にはなるので、ここはここでメディカル・インサイトとして付加価値は出せる部分なのだが、TOBYOプロジェクトのコア・バリューは上記で言い尽くされていると考えている。


"narrow path"の出口が見えてきた。