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メディカルツーリズム〜日本は医療でも買い負ける?〜

土曜日に、タイのバンコク病院で営業・マーケティングを担われている田中耕太郎氏の講演を拝聴した。


元々、起業する前からメディカルツーリズムは事業のネタとして真剣に考えていたこと、そしてタイは住友電工時代に何度も足を運んだ馴染みのある国だったこともあって、期待値が高かったのだが、それを上回る素晴らしい講演だった。


この講演を聞いての学びは以下の2つに集約される。(いずれも田中氏の講演内容がヒントになっているが、そこから何を読み取ったかは筆者の全くの個人的見解である。)



①今後、医療資源は国際的な"流動化"が加速する


メディカルツーリズムは患者の流動化であるが、元はと言えば自国の需要と供給のミスマッチにより、流動化せざるをえなくなって起きた事と言える。


米国のようにあまりにも価格(医療費)が高すぎて需要に見合わないケース、イギリスのように供給不足で手術に半年待ちみたいなことが起きるケース、カンボジアミャンマーのようにそもそも自国に高度な医療資源が殆どないケース、等々。


一方、供給(医療従事者)がさして流動化しないのは、各国が独自の国家試験を合格しないと医療従事者としての活動を認めていないからだ。しかしながら、これだけITが発達してくると、部分的アウトソースを海外の医療資源に頼る、ということが起きてくるのではないか。


これは、田中氏の講演の中で、日本人のタイへのメディカルツーリズムの可能性として、精密検査を挙げられていたのがヒントになっているのだが、例えば日本で放射線医が不足していて"読影"がボトルネックなのであれば、その部分は海外にアウトソースする、というような発想が必要だろう。


いずれにせよ、医療資源が国際間でもっと流動化していくことになる。


ちなみに、講演会場であった「さいたまメディカルタウン」は検査に特化して日本国内を拠点にこうしたアウトソース先になろうとしている、なかなかに先進的なビジネスモデルを築きつつある医療施設であった。



②日本は医療でも"買い負け"するリスクがある


日本の医療は高齢化に伴い需要が拡大していく中で、どんどん"供給不足"に陥っていく。私がかねて主張しているように、海外の医療従事者を日本に受け入れていかないといずれ立ち行かなくなる。


しかし、タイの医師もそうだが、原則資本主義的な「ドクターフィー」で動いている医師が海外には多いことを考えると、それなりの条件をオファーできなければ質の良い医師は日本に来てくれないだろう。


ちなみに、バンコク病院の(患者の国籍という意味での)国別売上の上位5カ国は、

 1位:UAE
 2位:カタール
 3位:日本
 4位:ミャンマー
 5位:エチオピア


日本は2005年までは1位だったがその後は低落傾向。1位・2位のアラブ勢は2004年当時はベスト5に1つも入っていない。


アジアの国々には、"オカネ持ち"は実はたくさんいる。彼らに国際的な医療資源を"買い負け"してしまうリスクを念頭に置いて、供給スキームを考えていかないと、日本では治療されずに放っておかれる患者が続出、という考えたくない絵が現実になってしまう。



以上が、「医療」の側面で見た時の学びである。


最後に、アジアでの現地生活の長い田中氏ならではの至言。


「海外との競争では切れる日本刀になるより、なまくらな青銅刀が長持ちする(もっといい加減になろう)」


"マイペンライ"(ま、気にしないでいこうや!)精神が普及している微笑みの国タイでの日々を、ふと思い出した瞬間だった。