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Days of Meaningful Life

医療の変革 医療への視点

土曜日の午後のひと時、スタバで一仕事終えかけた時、後ろの席の初老の女性が話し始めた。


「なんとかシュ、っていうからね、そんなの別にガンだなんて思わないじゃない。それがね、ガンだって医者は言うのよ。悪性リンパ腫っていうらしいの」

「現実を直視してくださいなんて言うのよ。そんなこといきなり言われたって、こっちも何がなんだかわかんないじゃない。別に身体の方はそんな大した症状はないんだし。抗ガン剤やりますって言われてもね。。。


しかもね、その医者ったら、『僕の言うこと聞けないんですか。僕はこの近隣何十万人の血液がんの患者さんをすべてみているんですよ。厭なら他へ行ってください』なんて言うの。ひどいと思わない?」


話の内容が内容なだけに、思わず耳をそばだててしまった。


ちょうど今日、がん治療に携われている先生と面談する機会があり、その時にも、「がん治療医にはコミュニケーションのスキルを身につけさせる必要がある。特に、『告知』『再発』『転院』の話を切り出す時に、きちんとコミュニケーションできる医師が少ない」という話が出た。


きちんとしたコミュニケーションスキルを持っていない医師が告知をするのは、腕が伴っていないまま患者の身体にメスを入れるのと同じくらい罪が重い。


患者さんにとって、その後の闘病生活が医師への不信感と病気への不安感で満ち満ちたものになってしまったとしたら、いくら最新の治療を施して多少の生存期間の延長を得られたとしても、患者さんにとって良い治療だったとは言えないだろう。


なぜなら、患者さんが必要としているのは、単なる「生存期間(Days of Life)」ではなく、「意義のある時間(Days of Meaningful Life)」なのだから。広島がんサポートで活躍されている中川圭さん曰く、「私たちはガンと闘うために生きているわけではありません。生きるためにガンと闘っているのです」という患者さんの気持ちを医療者は汲み取らなければならない。


しかるに、現在のがん治療で医師がよく使う目標は「ゴセイ(5年生存率)」なんていう言葉であったりする。科学的には正しい概念かもしれないが、患者さんにとって本当に必要な事を表現しきれているかと言うと、前述の通りちょっと疑問である。


意義のある時間(Days of Meaningful Life)を実現するのにあたり、ICF(国際生活機能分類)という概念があることを前述のがん治療医の方から教えて頂いたが、今後そういった"ソフト"な概念に基いた指標をがん医療の質の軸に据えて行かざるを得なくなるであろう。


医師のコミュニケーション力を上げることは、メディカル・インサイトの事業の柱の一つ。この問題は今後もしっかりと追いかけねば。