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ジェムザールとドラッグ・ラグ

いわゆる「ドラッグ・ラグ」と呼ばれている問題、最近はマスコミにもかなり取り上げられて人口に膾炙してきているが、同じドラッグ・ラグでも色んなケースがある。


①全くの新規成分の薬剤の開発が海外より遅れる

②既存の成分の薬剤が新たな適応を取得するのが海外より遅れる

③承認されてはいるが、海外のように普及しない
 −例:医療用麻薬、子宮頸がんワクチン、等


このたび、ジェムザールが卵巣がんでの適応追加につき治験を行なわなければならなくなりそうらしいのだが、これは②のケースに当てはまる。しかし、本当にこの治験が必要かということについて、HSP同級生の勝俣先生がMRICの記事の中で非常に鋭い意見を出されている。


以下、一部を転載

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ジェムザールは、・・・(中略)… 発売から10年が過ぎ、もうすぐジェネリックが出るという薬剤でもある。卵巣がんに対する適応は、海外では既に81ヶ国以上あり、先進国はおろか、東南アジア、アフリカ諸国もほとんど承認し、適応されないのは、日本か北朝鮮かというレベルになってきている。
 …(中略)…
卵巣がんに対するジェムザールは、2004年にEMEAが承認しているが、米国FDAは実は、自国で治験をすることなく、欧州のデータのみで、2006年に承認している。このあたりは、欧州のデータの質を評価して、ということであると考えられるが、卵巣がんという比較的稀少な疾患であり、かつ化学療法に感受性が高いが、難治性癌であることの特性も考慮した専門家の判断であることが理解できる。無駄な治験・臨床試験を繰り返さないと考えるところも合理的判断と思われる。その後、卵巣がんに対するジェムザールは、ドキシルとのランダム化比較試験も2つ報告されており、ドキシルとほぼ匹敵する治療成績が得られ、卵巣がんに対するセカンドライン化学療法の地位を確保したと言える。これらのエビデンスを基に、卵巣がんに対するジェムザールは、世界のガイドラインにも記載があり、日本の卵巣がん治療ガイドラインにも記載されており(日本婦人科腫瘍学会2007年度版)、もはや標準治療薬の一つとして考えてよいと思われる。
 このような標準治療になっている薬剤に対して、元々、欧州、米国でもやっていない企業治験をやらせ、それをわざわざまた国の税金を使って、審査・承認をやることは国の税金の無駄遣いとしか言いようがない。

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これ以上解説が全く要らない、非常に明快な論理である。


ちなみに、僕個人の意見としては、前述のケースの中で①のラグは必ずしも悪いものばかりではないと思う。よろしくない表現かもしれないが、他の国で実践的に使ってみた結果を見てから導入の可否ややり方を考える、というのは開発効率を考える上では拙くない戦略だ。


しかし、勝俣先生も書かれているように、今回のような②のケース、しかも標準治療薬として海外で既に確固たる地位を築いた製品・治療法に対し、治験を課してドラッグ・ラグを引き起こすということは医療資源の無駄であると同時に、患者さんが命を延ばすことをストップさせる"未必の故意"とだと考える。


このような医薬品行政に対しては、我々ははっきりと「No」という声を上げていかなければならない。