書評:「論点思考」

BCGの大先輩、内田和成さんの最新著「論点思考」を拝読した。


別著「仮説思考」とセットで、あらゆる層の"仕事人"にとって、一度は目を通しておくと良い内容だと思う。内田さんの特徴なのだが、非常に平易な言葉使いで、経営コンサルタントの思考・行動のエッセンスを抽出されている。


内田さんは仮説思考と論点思考を同様の重みで捉えておられるが、コンサルタントから実業の世界に戻った自分の経験から考えると、実業の世界では論点思考の方がより重要だと思う。また、政策立案の世界では更に重要だろう。


論点(何が本当の問題なのか)をきちんと設定し損ねると、組織全体で膨大な無駄な(最悪の場合有害な)労力が費やされることになる。


会社や役所のような組織だと、論点を考えないで打ち手だけどんどん出す"思いつき上司(政治家とも言い換えられる)"や、論点設定を間違えたまま指示を出す"思い込み上司"はたくさんいる。


後者の例でいえば、「本当は顧客のニーズにそぐわないマーケティングメッセージになってしまっているのが問題なのに、『どうやったら広告の出稿量を増やせるのか?』に血眼になる、みたいな話だ。


生産性を高め、「ワークライフバランス」が実現するためには、実はこの「論点思考」が指導者層に流布するかどうかが大きな鍵なのである。