病児保育の経営難に見るビジネスモデルの見誤り

今朝のNHKニュースで、国の補助金の制度が変わったため、病児保育の経営が苦しくなるところが大半という話が出ていた。
(内容的には↓のブログ記事が参考になる)
http://hanasyoubu.blog.drecom.jp/archive/49607


実は、病児保育については起業のアイディアをあれこれ考え始めていた3年ほど前に、「これはいけるのでは」と思った事業モデルなのだが、すでに「フローレンス」という立派な先行者がいることを知って、「一番じゃなければ面白くないな」と思って断念した経緯がある。


その後読んだ、フローレンス代表の駒崎さんの著書「社会を変えるを仕事にする」は、自分の起業マインドを高める大いなるエネルギー源になったものだ。


こういう話が出るということはフローレンスの経営も大変なのかしらと、ふと頭をよぎり、HPを訪れてみたが、心配するなんてとんでもない話で、久しぶりにわくわくするビジネスモデルとHPを拝見した。
http://www.florence.or.jp/


フローレンスは補助金制度を活用したビジネスとはまったく無縁のものなのだが、補助金制度を活用した場合どうなるかというと、上記の記事にもあるように、

・定員4人の施設
・看護師1名と保育士2名の配置がマスト
・補助金は利用者数によって増減
  −年間利用者数600人(のべ)で補助金が920万円

というような感じになるらしい。
1日の利用料金の目安が2000円くらいらしいのだが、これでは明らかに経営は成り立たない。↓のように固定費がまかなえない状態だ。

・収入は1000万円強(利用料120万円+補助金920万円)
・経費は人件費だけで1000万円強(看護師400万円+保育士300万円×2とした)


ちなみに、この600人のモデルでも平均の利用人数より多い。そりゃあ8割方赤字になるわけだ。一方で、年間利用人数600人ということはキャパシティ(年間1460人)に対し、利用率は50%未満。この数字も低いと言わざるを得ない。


病児保育のビジネスモデルを考える時、実はここがポイントとなる。そもそも病児保育の場合、需要の波が極端に大きいことが想定される。その地域の子供たちの間で風邪やインフルエンザが流行った時は一気に需要が増えるが、"薙ぎ"の時期はほとんど需要がない。


従って、需要に見合った供給を行なうためには、非常にフレキシブルな体制を作る必要があり、固定したハコをつくって固定したヒトを張るという補助金によるビジネスモデルは馴染まないのだ。更に言うと、サービスを受ける側にとっても、他の病気の子供が一緒にいるところに子供を送り届けるのは抵抗感があるし、働いている看護師さんや保育士さんにしても、複数の子供の面倒をみると感染のリスクも高まる。


かくして、普段は閑古鳥、いざ風邪が流行った時は子供を預けられないお母さん続出、そして施設は赤字にあえぐ、という非常に不健全な状況に陥ってしまっているのだ。


厚生労働省のやるべきなのは、補助金の額を調整することではなく、変動費型のビジネスモデルへの変容を制度上促すことである。フローレンスがヒントをいくらでも示しているはずだ。