UGCがもたらす変化〜DTCからDFCへ〜

日本最大の闘病サイトライブラリー「TOBYO」についての紹介を以前のエントリー(http://d.hatena.ne.jp/healthsolutions/20091225/1261753700)でしたが、いわゆるUGC(User Generated Contents)が医療の世界でもかなりの厚みが出てきた。TOBYOサイトに掲載されているブログの数も2万近くまで増えてきている。Mixiなどでも患者同士のSNSがかなり盛んになっていると聞く。


こうした動きは患者さんやご家族にとって朗報であると同時に、医療サービスのプロバイダー側(病医院、薬局、製薬会社、医療機器メーカー等)にとっても、大きな意味を持ってくる。


それは、最終ユーザーである患者さんやご家族の"本音"や"実態"が「可視化」されるということである。


もちろん今までも、一部の医療機関が投書箱を設置してみたり、製薬会社がコールセンターを設置してみたりと、「可視化」の努力が無かったわけではないが、こうした手前ミソ的な調査でどこまで"本音"や"実態"をつかめるかというと甚だ心もとない。


それよりは外部機関に実施を委託する調査の方が良いしそれはそれでやるべきだ。しかしながら、それでも後付けで行なう調査は"記憶"に頼らざるを得ないという弱点がある。それに対し、UGCの利点の一つは、「いつどこでどうした」「そしてそれがどうなった」という点がタイムリーにストーリーの形で"記録"されていることにある。(自分が書いた日記を久しぶりに読み返してみて、「あ、あの時そういえばこんなことがあったね。」と記憶の引き出しに閉じ込められてしまっていることを実感することはままあるだろう。)


UGCの利点は他にもある。


製薬会社の社員は自分が売っている商品を自身で使うことがまずない。使ってみてどうなのかという情報は、ユーザーからではなく、主に医師というフィルターを通して収集せざるを得ない。もちろん医師を通すことによってノイズが減るという利点もあるのだが、医師が把握していない患者の経験や感触はヤマほどあるはずで、そうした今まで「ブラックボックス」だった"肌感覚の情報"がたくさん詰まっているという意味でUGCは宝の山なのだ。

例えば、「先生からはAという強いお薬も出されたが、黄色いドギツい色をしているし胃腸への副作用も怖いので結局飲むのはやめてしまった」なんていう話は先生の耳には伝わらないものだ。


ここ数年、製薬業界では「DTC (Direct to Consumerの略。消費者に対し製薬会社が直接的にマーケティングメッセージを届けること)」が流行りであったが、UGCの充実が進むにつれ、「DFC(Direct from Consumerの略。本ブログ筆者の造語)」に力点が置かれるようになるのではなかろうか。